薬剤師の転職に年齢制限はある?年代別の成功戦略と実態データを徹底解説

薬剤師 転職 年齢

薬剤師として転職を考えているものの、「自分の年齢で転職できるだろうか」「何歳までなら転職しやすいのか」と不安を感じていませんか。この記事では、厚生労働省の統計データをもとに、薬剤師転職における年齢の実態と、年代別の具体的な転職戦略を解説します。あなたのキャリアを最大限に活かす転職方法が見つかるはずです。

薬剤師転職に明確な年齢制限はない【公的データで解説】


結論から言えば、薬剤師転職に法的な年齢制限はありません。ただし、職場や業種によって採用されやすい年齢層に傾向があるのが実態です。


薬剤師の年齢構成と転職市場の現状


厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、2022年時点での薬剤師登録人数は32万3,690人で、年齢構成は以下の通りです。
30~39歳:82,083人(25.4%)
40~49歳:73,232人(22.6%)
50~59歳:61,667人(19.1%)
60~69歳:43,018人(13.3%)
出典:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 2024年3月19日公表

 

30代~50代が全体の約67%を占めており、幅広い年代の薬剤師が現役で活躍していることがわかります。薬剤師の平均年齢は46.7歳と、ミドル世代以降も長く働ける職業です。

薬剤師の有効求人倍率から見る転職市場


厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、薬剤師の有効求人倍率は以下の推移を示しています。
2018年度:2.03倍
2021年度:2.20倍
2023年度:約3.14倍
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年3月分及び令和4年度分)」

 

有効求人倍率が1倍を大きく上回っており、現在も薬剤師は売り手市場が続いています。ただし、年齢や経験によって転職難易度に差が生じるのが実情です。

【年代別】薬剤師転職の難易度と成功のポイント


ここでは、各年代における転職の実態と、成功するための具体的な戦略を解説します。自分の年代に合った転職アプローチを見つけましょう。


20代薬剤師の転職|可能性は最も広い


転職難易度:★☆☆☆☆(低い)
20代は「第二新卒」として扱われることも多く、全ての業種・職場で最も転職しやすい年代です。

 

20代が有利な理由
ポテンシャル採用が主流:実務経験が浅くても、将来性を評価されやすい
人件費が抑えられる:企業側の雇用コストが低く、採用されやすい
長期的なキャリア形成:定年まで長く働けるため、企業の投資対象になりやすい

 

20代の転職戦略
未経験業種へのチャレンジ:病院薬剤師、企業薬剤師(CRA・MRなど)への転職は20代が最適
スキル習得の優先:認定薬剤師や専門資格の取得を視野に入れる
複数の職場経験:調剤薬局→ドラッグストア→病院など、幅広い経験を積むことでキャリアの選択肢が広がる


30代薬剤師の転職|即戦力として評価される黄金期


転職難易度:★★☆☆☆(やや低い)
30代は薬剤師転職市場で最も需要が高い年代です。一定の実務経験とスキルがあり、体力的にも充実しているため、あらゆる職場で歓迎されます。

 

30代が高く評価される理由
即戦力としてのスキル:調剤経験、服薬指導の実績が豊富
管理薬剤師への昇進可能性:マネジメントスキルが評価されやすい
年収アップのチャンス:経験を武器に好条件での転職が可能

 

30代の転職戦略
キャリアアップ転職:管理薬剤師、エリアマネージャーへの昇進を狙う
専門性の強化:在宅医療、がん専門薬剤師など、特定分野のスペシャリストを目指す
年収交渉の準備:調剤経験年数、管理薬剤師経験を明確にアピールする
注意点:30代後半になると製薬会社などの企業薬剤師への転職難易度が上がります。企業薬剤師を目指すなら、35歳までに動き出すことをおすすめします。

40代薬剤師の転職|経験とマネジメント力が武器


転職難易度:★★★☆☆(中程度)
40代の転職は、一般職では厳しいとされますが、薬剤師の場合は経験と専門性を武器にすれば十分に可能です。

 

40代の転職市場の実態
厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると、40~44歳の入職率は男性6.2%、女性11.0%、45~49歳は男性5.2%、女性9.0%となっています。女性薬剤師の入職率が高いのは、育児が落ち着いた時期の復職や転職が多いためです。

 

40代が評価されるポイント
豊富な実務経験:10年以上の調剤経験、幅広い処方せん対応能力
管理薬剤師経験:店舗運営、スタッフ育成の実績
専門資格:認定薬剤師、専門薬剤師などの資格保有

 

40代の転職戦略
転職しやすい職場:
調剤薬局(中小・個人経営):管理薬剤師としての採用が多い
ドラッグストア:店舗拡大に伴う管理薬剤師の需要が高い
中小規模の病院:急性期病院は難しいが、慢性期病院や地方の病院は可能性あり

転職が難しい職場:
大手調剤薬局チェーン(年功序列の給与体系のため、40代後半以降の中途採用に消極的)
大学病院・総合病院(新卒採用が中心)
製薬会社(MR・CRAは40代未満が一般的)

 

40代の転職活動のコツ
マネジメント経験のアピール:部下の育成実績、店舗運営の改善事例を具体的に示す
謙虚な姿勢:年下の上司や同僚と協力できる柔軟性をアピール
早めの行動:50代に近づくほど難易度が上がるため、転職を考えているなら早めに動く

 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の年収は50代後半でピークを迎えます。男性薬剤師は50~54歳で約719万円、女性薬剤師は60代後半で約712万円です。
出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」 2024年3月27日公表

50代薬剤師の転職|人手不足の職場を狙う


転職難易度:★★★★☆(高い)
50代になると、薬剤師でも転職のハードルは高くなります。ただし、人手不足の地域や職場を選べば、転職は十分に可能です。


50代の転職市場の実態
厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると、50~54歳の入職率は男性4.2%、女性8.5%、55~59歳は男性5.0%、女性7.8%となっています。


50代が採用されやすい職場
地方の調剤薬局・ドラッグストア:薬剤師不足が深刻な地域では年齢制限が緩やか
中小・個人経営の薬局:管理薬剤師の欠員補充として採用されるケースあり
パート・派遣勤務:正社員にこだわらなければ選択肢は広がる


50代の転職戦略
地方転職も視野に入れる:都市部より地方の方が採用されやすい
柔軟な雇用形態:パートタイム、嘱託職員、派遣なども検討する
在宅医療の経験をアピール:在宅医療のスキルは高齢化社会で需要が高い
注意点:50代では未経験業種への転職は極めて困難です。これまでの経験を活かせる職場を選ぶことが成功の鍵です。

60代以上の薬剤師|資格を活かして働き続ける方法


転職難易度:★★★★★(非常に高い)
60代以上の転職は、一般的に定年退職の年代であるため、正社員での採用は極めて困難です。しかし、薬剤師資格を活かして働き続けることは可能です。

 

60代以上の転職市場の実態
厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると、60~64歳の入職率は男性11.9%、女性7.0%、65歳以上は男性10.2%、女性4.5%となっています。60代前半は再雇用が多いため入職率が高くなっています。

 

60代以上が働ける職場
パートタイム・嘱託職員:正社員にこだわらず、週2~3日勤務など柔軟な働き方
地方の中小薬局:年齢不問の求人がまれに出る
薬剤師不足の地域:地方では60代以上でも歓迎されることがある

 

60代以上の転職戦略
人脈を活用する:過去の職場や知人からの紹介を頼る
地域を限定しない:薬剤師不足が深刻な地域への移住も視野に入れる
健康面をアピール:体力的に問題なく働けることを強調する

業種別の年齢制限と転職のポイント


転職のしやすさは、年齢だけでなく「どの業種を選ぶか」にも大きく左右されます。ここでは、業種別の年齢制限の実態を解説します。


調剤薬局への転職|年齢制限は比較的緩やか

大手チェーン
大手調剤薬局チェーンは、年功序列の給与体系を採用していることが多く、40代後半以降の中途採用には消極的です。新卒や若手の育成に力を入れているため、年齢が上がるほど採用されにくくなります。

年齢制限の目安:40代前半まで

 

中小・個人薬局
中小・個人経営の薬局では、管理薬剤師の欠員補充や即戦力を求めるケースが多く、50代以上でも採用される可能性があります。経験と知識が豊富な薬剤師を優遇する傾向があります。

年齢制限の目安:50代以上でも可能性あり

厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、薬局で働く薬剤師の平均年齢は46.8歳です。

出典:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 2024年3月19日公表

ドラッグストアへの転職|年齢制限は緩く、管理薬剤師のニーズが高い


年齢制限の目安:50代以上でも可能性あり
ドラッグストアは全国で店舗拡大を続けており、管理薬剤師の需要が非常に高い業種です。年齢よりも実務経験やマネジメント能力が重視されます。

病院への転職|年齢制限は厳しめ


大学病院・総合病院
大学病院や大規模な総合病院は、新卒採用が中心です。急性期医療を扱うため、夜勤や当直に対応できる若手が優先されます。中途採用の求人自体が少なく、競争率も高いため、年齢が上がるほど転職は困難です。

年齢制限の目安:40代前半まで


中小病院・慢性期病院
地方の中小規模の病院や、高齢者のリハビリテーションを担う慢性期病院では、40代後半以降でも採用される可能性があります。薬剤師不足に悩んでおり、即戦力を求めているためです。

年齢制限の目安:40代後半~50代前半まで


厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、病院で働く薬剤師の平均年齢は42.1歳です。

出典:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 2024年3月19日公表

企業薬剤師への転職|年齢制限は職種により異なる



製薬会社(CRA・MR)
製薬会社のCRAやMRは、人気が高く競争率も高い職種です。企業側は若手の育成を優先するため、特別なスキルや実績がない限り、40代以降の転職は厳しくなります。

年齢制限の目安:
CRA(臨床開発モニター):40代前半まで
MR(医薬情報担当者):40代前半まで


医薬品卸・物流センター
医薬品卸業や物流センターでは、年齢制限が緩やかです。薬剤師資格を活かしながら、調剤業務以外の仕事に携わりたい方に向いています。

年齢制限の目安:年齢制限なし


公務員薬剤師への転職|明確な年齢制限あり


公務員薬剤師は、唯一明確な年齢制限がある職種です。公務員試験に合格する必要があり、年齢制限を超えると受験資格がなくなります。

年齢制限:
国家公務員・麻薬取締官:30歳未満
地方公務員:自治体により異なる(29~35歳未満が多い)

年齢を重ねた薬剤師が転職を成功させる5つのポイント


ここでは、ミドル世代以上の薬剤師が転職を成功させるための具体的な戦略を解説します。


1. 豊富な経験と専門性をアピールする


年齢を重ねた薬剤師の最大の強みは、豊富な実務経験と専門知識です。以下のポイントを積極的にアピールしましょう。


アピールすべき経験・スキル
調剤経験:何年の調剤経験があるか、取り扱った処方せんの種類
服薬指導の実績:患者対応の経験、在宅医療への参加
管理薬剤師経験:店舗運営、スタッフ育成、医薬品管理の実績
専門資格:認定薬剤師、専門薬剤師、実務実習指導薬剤師など

2. 謙虚で柔軟な姿勢を示す


年齢が高い薬剤師が転職する際、採用担当者が懸念するのは「年下の上司や同僚とうまく協力できるか」という点です。


学ぶ姿勢:新しい職場のやり方を尊重し、積極的に学ぶ意欲を示す
協調性:チームワークを重視し、他のスタッフと協力できることを強調
柔軟性:これまでの経験に固執せず、新しい環境に適応できることをアピール


3. 新しい技術・知識への適応力を示す


薬剤師業界では、電子処方せん、オンライン服薬指導、DX化など、新しい技術が次々と導入されています。新しいものを積極的に取り入れる姿勢は、年齢に関係なく評価されます。


最新知識のキャッチアップ方法
eラーニングの受講:日本薬剤師研修センターなどのオンライン研修
電子処方せんへの対応:新しいシステムへの理解を深める
PC・ITスキルの向上:電子薬歴、調剤システムの操作に慣れる


4. 人手不足の地域・職場を狙う


年齢が高くなるほど、人手不足が深刻な地域や職場を選ぶことが転職成功の鍵です。

 

薬剤師不足が深刻な地域
厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、人口10万人あたりの薬剤師数が少ない都道府県は以下の通りです。
沖縄県:149.4人
福井県:163.6人
青森県:167.2人
出典:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 2024年3月19日公表

これらの地域では、年齢に関係なく薬剤師が求められています。


5. 薬剤師専門の転職エージェントを活用する


年齢が高い薬剤師の転職には、転職エージェントの活用が不可欠です。エージェントは、年齢制限が緩やかな求人や、非公開求人を紹介してくれます。

 

転職エージェントのメリット
年齢に合った求人の紹介:ミドル世代以上を歓迎する求人を厳選
職場の内部情報:年齢層、人間関係、職場の雰囲気など、求人票には載っていない情報を提供
年収交渉の代行:給与や待遇の交渉を代わりに行ってくれる
面接対策:年齢をカバーする自己PRのアドバイス

転職時に注意すべき「暗黙の年齢制限」とは


法的な年齢制限はないものの、実際の転職市場には「暗黙の年齢制限」が存在します。これを理解しておくことで、効率的に転職活動を進められます。

暗黙の年齢制限が存在する理由


給与体系の問題:年功序列の企業では、年齢が高い中途採用者の給与が高くなりすぎる
長期的なキャリア形成:若手の方が定年までの期間が長く、企業の投資対象になりやすい
体力面の懸念:夜勤や当直が多い職場では、若手が優先される

暗黙の年齢制限を突破する方法


実績を明確に示す:管理薬剤師経験、専門資格、売上改善の実績など
即戦力をアピール:入社後すぐに現場で活躍できることを強調
謙虚な姿勢:年齢が高くても、柔軟に学べることを示

まとめ


薬剤師の転職に法的な年齢制限はありませんが、年齢や業種によって転職の難易度は変わります。重要なのは、自分の年齢と経験を正しく理解し、それを強みに変える戦略を持つことです。

年齢は決して転職の障害ではありません。あなたのキャリアと経験を最大限に活かせる職場を見つけ、充実した薬剤師人生を歩みましょう。

 

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監修 薬進キャリアサポート代表エージェント
キャリアコンサルタント

田井 靖人

2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。

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