薬剤師として転職を考えているけれど「いつ転職すればいいのか分からない」「今のタイミングで転職しても大丈夫?」と悩んでいませんか。転職のタイミングを誤ると、希望の条件で転職できなかったり、キャリアに傷がついたりする可能性があります。本記事では、薬剤師転職市場の最新データをもとに、年齢・時期・ライフステージ別に最適な転職タイミングを徹底解説します。
薬剤師転職市場の現状【2025年最新データ】
転職タイミングを考える前に、まず現在の薬剤師転職市場がどのような状況にあるのかを理解することが重要です。市場動向を把握することで、より戦略的な転職活動が可能になります。
薬剤師の有効求人倍率と需給バランス
薬剤師は他の職種と比べて転職しやすい環境にあるといえます。
ただし、2015年の7.18倍から2021年には2.68倍へと推移しており、かつてほどの売り手市場ではなくなりつつあります
厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」(令和3年3月)によると、67.9%の薬局で「適切な人数を確保できている」「適切な人数よりやや多く在籍している」と回答し、「適切な人数より不足している」と回答したのは19.4%でした。
出典:厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要」
地域による転職難易度の違い
転職市場は地域によって大きく異なります。都市部では薬剤師の供給過剰傾向にあり競争が激化している一方、地方では依然として薬剤師不足が続いています。
人口10万人当たりの薬剤師数は全国平均で190.1人ですが、地域差が大きく、平均を下回る36の道府県では薬剤師不足が続いています。
出典:薬キャリ「薬剤師は不足している?職業としての将来性は?求人倍率や地域データから現状を把握」
転職に最適な時期|求人数と競争率から考える
転職活動を成功させるためには、求人が多く出る時期や競争率の低い時期を狙うことが重要です。ここでは月別の転職市場の特徴を解説します。
1月~3月:求人数が最も多い時期
年間で最も求人数が多い時期は1月~3月です。12月のボーナス支給後に退職者が増えるため、4月入社に向けて多くの求人が出ます。大手調剤薬局やドラッグストアでは、4月から教育体制を整えるため、この時期の採用に力を入れています。
メリット
選択肢が豊富で希望条件に合う求人を見つけやすい
新規出店や事業拡大に伴う求人が多い
未経験分野へのチャレンジがしやすい
デメリット
競争率が高く、人気求人は応募が殺到する
選考プロセスが長引く可能性がある
4月~5月:穴場の好条件求人が出やすい時期
4月・5月は薬剤師国家試験の結果発表後であり、不合格者の内定取り消しにより欠員が生じるケースがあります。病院などでは急な欠員を補充するため、好条件の求人が出ることがあります。
7月・1月:ボーナス後の転職に最適
6月と12月のボーナス支給後である7月と1月は、転職希望者が増える時期です。ボーナスを受け取ってから転職したい方にとって最適なタイミングといえます。
注意点: ボーナス支給前に退職意思を伝えると、会社によってはボーナスが支給されない場合があります。就業規則の「ボーナス支給規定」を事前に確認しましょう。
8月~9月:職場になじみやすい時期
8月・9月は処方箋枚数が比較的少ない時期であり、新しい職場での教育に時間をかけてもらいやすいというメリットがあります。日本薬剤師会のデータでも、この時期は処方箋枚数が少ないことが示されています。
繁忙期である冬に比べて余裕を持って業務を覚えられるため、特に未経験分野への転職を考えている方におすすめです。
10月~12月:競争率は低いが求人数も少ない
この時期は転職希望者が少なく競争率は低い傾向にありますが、求人数自体も少なくなります。じっくりと転職先を探したい方には適していますが、選択肢は限られます。
年齢・経験年数別の最適な転職タイミング
年齢や経験年数によって、転職の難易度や求められるスキルは大きく変わります。自分の状況に合わせた転職タイミングを見極めましょう。
第二新卒(入社1~3年目):2年以上の経験を積んでから
薬剤師は調剤経験が2年以上あると転職しやすい傾向にあります。即戦力として評価されつつも、30代・40代と比べて年収が低いため、コストパフォーマンスの良い人材として採用されやすいのです。
調剤経験1年以上を採用条件とする企業も多く、柔軟性のある第二新卒は売り手市場です。ただし、1年未満での短期離職は「忍耐力がない」と判断される可能性があるため、最低でも1年、できれば2年以上は同じ職場で経験を積むことをおすすめします。
20代~30代:キャリアアップに最適な時期
薬局や病院への転職は、体力や最新知識の吸収スピードの観点から、若い方が採用されやすい傾向があります。特に総合病院や企業への転職を考えている場合、35歳以上になると年齢制限により不利になるケースがあります。
この年代は、専門性を高めたり、管理薬剤師を目指したりするのに最適な時期です。
40代以降:専門性と経験を活かした転職
40代以降の転職は、20代・30代と比べると難易度が上がります。しかし、在宅医療の経験、管理薬剤師経験、認定薬剤師資格、電子処方箋対応スキルなどの専門性があれば、年齢に関係なく転職は可能です。
地方や薬剤師不足地域では、経験豊富な40代以降の薬剤師は高く評価されます。
ライフステージ別の転職タイミング
人生の節目となるライフイベントも、転職を考える重要なタイミングです。自分のライフプランに合わせた転職戦略を立てましょう。
結婚を機に転職する場合
結婚後、家事や育児を見据えて残業の少ない職場への転職を希望する方は多くいます。逆に、家族のために収入アップを目指す方もいます。
結婚は「今すぐ転職しなければならない」理由ではないため、後輩の育成が進んだタイミングや、ボーナス支給後、求人が増える1~3月を狙って計画的に転職するのがおすすめです。
出産・育児のタイミング
出産・育児で一度退職した方が、育児が落ち着いたタイミングで再就職するケースは非常に多いです。短時間勤務やパート勤務から始めて、徐々にフルタイムに戻すという働き方も可能です。
重要な注意点:育休は転職後1年未満では取得できない会社が多いため、妊娠前に転職する場合は、産休・育休制度が充実しており、過去に取得実績のある職場を選ぶことが重要です。
時短勤務制度の有無、復職後のキャリアパス、育児支援制度などを事前に確認しましょう。
介護など家族の都合
親の介護や転居などの家族の都合で転職を迫られることもあります。この場合、退職タイミングの調整は難しいかもしれませんが、自分や家族の生活に合った勤務地・勤務時間の職場を慎重に探すことが重要です。
ワークライフバランスを重視する社風かどうかも確認しましょう。
キャリアアップを目指すタイミング
一定のキャリアを積んだ後、さらなるステップアップを目指す場合は、転職タイミングよりも「どこに転職するか」「何を目的に転職するのか」が重要です。
専門性を高められる環境、認定薬剤師取得支援がある職場、在宅医療に注力している企業など、自分のキャリアビジョンに合った転職先を選びましょう。
転職すべきか見極めるチェックポイント
転職を考えたとき、本当に今が転職すべきタイミングなのか冷静に判断することが重要です。以下のチェックポイントで確認してみましょう。
転職理由を明確にする
まず、なぜ転職したいのかを整理しましょう。エムスリーキャリアの調査によると、薬剤師の転職理由は1位「スキルアップのため(28%)」、2位「人間関係に不満(14%)」、3位「勤務時間・残業に不満(12%)」の順です。
転職理由を整理することで、次の職場に求める条件が明確になります。
改善の余地があるか考える
人間関係や職場環境の問題は、転職しなくても改善できる可能性があります。上司に相談する、部署異動を申し出るなど、現職で解決できる方法を検討してから転職を決断しましょう。
ただし、精神的・体力的に限界を感じている場合は、無理をせず転職を検討することが重要です。
在職期間の長さを考慮する
短期間での転職を繰り返すと「忍耐力がない」「すぐに辞めるのでは」と採用担当者に判断され、次の転職が不利になります。やむを得ない事情を除き、最低でも1年、理想的には2年以上は同じ職場で経験を積むことをおすすめします。
転職市場の動向を把握する
自分が希望する業態や地域の求人動向を把握することも重要です。求人が少ない時期や競争率が高い地域では、希望条件での転職が難しくなります。
転職活動にかかる期間と準備
転職を決意したら、計画的に活動を進めることが成功の鍵です。一般的な転職活動の流れと期間を理解しておきましょう。
転職活動の標準期間は約2ヶ月
薬剤師の転職活動にかかる期間は平均約2ヶ月です。内訳は、転職活動自体が約1ヶ月、退職手続きと引き継ぎに約1ヶ月です。
転職活動の流れ
求人情報の収集・絞り込み(1週間)
応募書類の作成・提出(1週間)
面接・職場見学(1~2週間)
内定・条件交渉(1週間)
退職意思の伝達・引き継ぎ(1ヶ月)
退職意思を伝えるタイミング
就業規則で退職の申し出期限が定められている場合が多いため、最低でも1ヶ月前には退職意思を伝える必要があります。繁忙期(年末や花粉シーズン)は避け、後任の確保や引き継ぎに十分な時間を確保しましょう。
焦った転職は禁物
数日で転職先を決める方もいますが、焦って転職先を決めると「人間関係が悪い」「雇用条件が違う」「残業が多すぎる」などのトラブルが起きる可能性が高くなります。
職場見学、雇用契約書の確認、面接での質疑応答をしっかり行い、納得できるまで探すことが重要です。
転職を成功させるための5つのポイント
最後に、転職を成功させるための重要なポイントをまとめます。
1. 自己分析とキャリアプランの明確化
自分の強み、弱み、やりたいこと、キャリアビジョンを明確にしましょう。「なぜ転職するのか」「転職で何を実現したいのか」を言語化することが重要です。
2. 情報収集を徹底する
求人情報だけでなく、企業の経営状況、職場の雰囲気、教育体制、離職率なども調べましょう。転職エージェントを活用すると、求人票には載っていない情報を得られます。
エムスリーキャリアの調査では、初めての転職で転職エージェントを利用した薬剤師の87%が、2回目以降も転職エージェントを利用しています。
3. 複数の選択肢を比較検討する
1つの求人に絞らず、複数の選択肢を比較検討しましょう。条件面だけでなく、職場の雰囲気、成長環境、将来性なども総合的に判断することが重要です。
4. 面接対策を入念に行う
転職理由、志望動機、自己PRを論理的に説明できるよう準備しましょう。特に転職回数が多い場合や短期離職がある場合は、納得できる説明が必要です。
5. 転職エージェントを活用する
薬剤師専門の転職エージェントは、求人紹介だけでなく、キャリア相談、面接対策、条件交渉、退職サポートなど総合的な支援を提供しています。特に初めての転職や、働きながらの転職活動では、エージェントの活用が成功の鍵となります。
まとめ
薬剤師の転職タイミングは、求人市場の動向、年齢・経験年数、ライフステージなど様々な要素を考慮して判断する必要があります。2025年現在、薬剤師の有効求人倍率は3.14倍と高水準を維持していますが、都市部では競争が激化しています。自分の状況に合った最適なタイミングを見極め、計画的に転職活動を進めることが成功の鍵です。転職に迷ったら、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
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田井 靖人
2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。