薬剤師が就職できない理由と内定獲得までの完全ロードマップ

薬剤師 就職できない

薬剤師国家試験に合格したのに就職できない──。2025年現在、この悩みを抱える薬剤師が増えています。かつて「薬剤師は引く手あまた」と言われた時代から状況は変化し、特に都市部では競争が激化しています。

本記事では、薬剤師専門のキャリアアドバイザーとして多数の就職支援を行ってきた実績をもとに、就職できない原因と具体的な解決策を解説します。

目次

薬剤師が就職できない5つの根本原因【市場変化の分析】

 

薬剤師の就職難には構造的な要因があります。公的統計データや業界の動向をもとに、市場環境の変化を客観的に分析し、なぜ就職が難しくなっているのかを解説します。

原因1:薬剤師の供給増加と市場環境の変化

厚生労働省「令和2年(2020年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、薬剤師数は321,982人に達しており、10年前(平成22年)の276,517人と比較して約45,000人増加しています。


出典:厚生労働省「令和2年(2020年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」


一方、薬学部の6年制への移行後、毎年多くの薬剤師が市場に参入していますが、薬局数の増加ペースはそれに追いついていません。特に東京、大阪などの大都市圏では、薬剤師を目指す学生が集中するため、競争が激しくなっています。

原因2:即戦力志向の強まりと採用基準の高度化

現在の薬局や医療機関では、新卒採用においても「コミュニケーション能力」「問題解決能力」「マネジメント適性」を重視する傾向が強まっています。
薬剤師免許を持っているだけでは不十分で、患者対応力やチームワーク、将来の管理薬剤師候補としての資質が評価されます。認定薬剤師資格保有者や、在学中に薬局実習で高評価を得た学生が優先的に採用される傾向も見られます。

原因3:地域格差の拡大─都市部vs地方の二極化

地方では依然として薬剤師不足が深刻である一方、都市部への就職希望者の集中により、都市部での就職難が加速しています。
厚生労働省の職業安定業務統計によれば、薬剤師の有効求人倍率は地域によって大きく異なり、都市部では低く、地方では高い傾向が継続しています。


出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」

原因4:調剤報酬改定による経営環境の変化

調剤報酬の改定により、薬局の収益構造が変化しています。特に対物業務から対人業務への転換が求められる中、経営が厳しくなった中小薬局では新規採用を控える動きが見られます。

原因5:大手企業・人気病院への応募集中

就職できない薬剤師の多くが「大手チェーン」「有名病院」「製薬企業」に応募を集中させています。人気企業への集中は競争率を高め、内定獲得を難しくしています。
応募先を幅広く検討することで、内定獲得の可能性は大幅に高まります。

就職できない薬剤師に共通する7つの失敗パターン

 

多数の就職相談から見えてきた、内定を得られない薬剤師に共通する具体的な失敗パターンを紹介します。自分に当てはまるものがないか確認しましょう。

失敗パターン1:「薬剤師だから大丈夫」という根拠なき自信

国家試験合格後、「薬剤師は人手不足だから就職活動は簡単」と考え、少数の企業のみに応募するケースが見られます。準備不足と応募数の少なさが、就職失敗の大きな原因となります。
現在の薬剤師就職市場では、一般企業の就職活動と同様の準備と戦略が必要です。

失敗パターン2:志望動機が「家から近い」「給与が良い」だけ

採用担当者が不採用にする理由として「志望動機の薄さ」が上位に挙げられます。


【NG例】
「通勤時間が短いから」
「給料が高いから」
「大手だから安定していそう」


【OK例】
「在宅医療に注力されており、私も在学中の実習で在宅訪問を経験し、この分野でスキルを磨きたいと考えました」
「貴社の『患者第一主義』という理念に共感し、実習での経験を活かして貢献したいです」

失敗パターン3:履歴書・ESの使い回しと誤字脱字

他社の社名が残っていた履歴書、誤字脱字がある応募書類は、その時点で選考対象外となります。応募先ごとにカスタマイズした内容で、誤字脱字を徹底的にチェックすることが基本です。

失敗パターン4:面接での受け身姿勢と準備不足

「なぜ薬剤師を目指したのか」に答えられない
「当社について知っていること」を答えられない
逆質問で「特にありません」と答える


面接は「評価される場」ではなく「相互理解の場」です。積極的な姿勢と十分な準備が不可欠です。

失敗パターン5:条件の高望みと妥協点の不明確さ

全ての条件を満たす求人は存在しません。「絶対条件」と「希望条件」を明確に区別することが重要です。
多くの「譲れない条件」を持つほど、応募できる求人が限られ、就職が難しくなります。

失敗パターン6:情報収集の偏りと視野の狭さ

大手就職サイト1社のみを利用し、中小薬局や地方求人を見ていないケースが多く見られます。


【推奨アクション】
複数の就職サイト・エージェントを併用
大学のキャリアセンターも活用
薬局見学・インターンシップに参加
先輩薬剤師へのOB・OG訪問

失敗パターン7:就職活動のスタート時期が遅い

就職活動は早期にスタートすることが重要です。6年生の4月までには本格的に活動を開始し、夏から秋にかけて内定を得られるようにスケジュールを立てましょう。
国家試験合格発表後に活動を始めると、良い求人が既に埋まっている可能性が高くなります。

【ステップ別】就職を成功させる完全ロードマップ

 

就職成功者の行動パターンを分析し、内定獲得までの具体的なステップを時系列で解説します。このロードマップに沿って行動することで、内定率を高められます。

STEP1:自己分析と市場理解(活動開始〜2週間)

【実施項目チェックリスト】
□ 自分の強み・弱みをリストアップ
□ 「なぜ薬剤師になりたいのか」を文章化
□ 5年後・10年後のキャリアビジョンを明確化
□ 希望条件を「絶対条件」「希望条件」「妥協可能」に分類
□ 薬剤師の職場(薬局・病院・ドラッグストア・企業)の特徴を理解


【ツール活用】
大学のキャリアセンターが提供する自己分析ツール、適性検査を活用しましょう。

STEP2:情報収集と応募先選定(2週間〜1ヶ月)

【推奨応募数】 最低でも10社以上に応募することをお勧めします。


【応募先の分散】
第一志望群(3社):最も入りたい企業
第二志望群(4社):条件がほぼ合致する企業
練習群(3社):面接練習も兼ねた応募
地域・業態・企業規模を分散させることがポイントです。

STEP3:応募書類の作成(1ヶ月〜1.5ヶ月)

【履歴書作成の5原則】
誤字脱字ゼロ(第三者にチェック依頼)
志望動機は企業ごとにカスタマイズ
具体的なエピソードを含める
数字や実績を盛り込む
読みやすいレイアウト

 

【添削サービスの活用】
大学のキャリアセンター、転職エージェントの無料添削を必ず受けましょう。

STEP4:面接対策(並行実施)

【頻出質問TOP10と回答準備】
志望動機
自己PR
学生時代に頑張ったこと
長所・短所
なぜ薬剤師を目指したのか
当社について知っていること
入社後にやりたいこと
他社の選考状況
患者対応で大切にしたいこと
逆質問
各質問に対して、1分程度で答えられる回答を準備し、模擬面接で練習しましょう。


【模擬面接の実施】

友人・家族・キャリアセンター・エージェントと最低3回は練習を。

STEP5:面接本番とフォローアップ(1.5ヶ月〜3ヶ月)

【面接当日の心構え】
開始15分前到着を目指す
身だしなみ最終チェック
企業情報の再確認
リラックスして自然体で臨む


【面接後のフォロー】

当日中にお礼メールを送信すると、熱意が伝わります。

STEP6:内定獲得と意思決定(3ヶ月〜)

複数内定を獲得した場合、以下の基準で総合的に判断しましょう。


【評価項目】
キャリアビジョンとの合致度
職場環境・人間関係
教育研修制度
給与・待遇
勤務地・勤務時間
企業の安定性・将来性


【重要】 内定辞退する企業には、速やかに丁寧な連絡を。薬剤師業界は狭いため、誠実な対応が将来につながります。

既卒・第二新卒・ブランクがある薬剤師のための特別戦略

 

新卒とは異なる課題を抱える既卒者やブランクがある薬剤師向けに、実績ある対策を解説します。実際の成功事例とともに、具体的なアプローチ方法を紹介します。

ブランク期間の効果的な説明方法

ブランク期間がある場合、その期間に何をしていたのかを正直かつ前向きに説明することが重要です。


【NG説明】
「特に何もしていませんでした」
「就職活動がうまくいかず…」
「やりたいことが見つからなくて…」


【OK説明】
「認定薬剤師資格の勉強に専念しました」
「医療ボランティアで患者対応の経験を積みました」
「語学力向上のため留学しました」
「家族の介護に専念する必要があり、その経験から高齢者への理解が深まりました」

短期離職をプラスに転換する方法

短期離職経験がある場合、前向きな説明が重要です。


【説明のポイント】
前職の退職理由をポジティブに転換
退職から学んだことを明確化
次の職場では長く働く意思を示す


【具体例】

「前職では調剤に特化していましたが、在宅医療やかかりつけ薬剤師として幅広く患者さんに関わりたいと考え、その体制が整っている貴社を志望しました」

派遣・パートからのステップアップ戦略

正社員での就職が難しい場合、以下のステップを踏むことで可能性が広がります。


1派遣薬剤師として実務経験を積む(6ヶ月〜1年)
2実績と評価を得る
3派遣先での正社員登用を目指す or 経験を活かして他社に応募


派遣として働きながら、実務経験を積み重ねることで、正社員への道が開けます。

年齢を強みに変える戦略(30代以上)

・社会人経験による成熟したコミュニケーション能力
・人生経験から得た患者理解力
・責任感と真面目さ
・他業種での実績(営業、マネジメント等)


これらを積極的にアピールすることで、年齢をハンディではなく強みに転換できます。

よくある質問(FAQ)

Q国家試験合格後、いつまでに就職活動を始めるべきですか?
A理想は6年生の4月から活動を開始することです。国家試験合格発表後では選択肢が限られるため、試験勉強と並行して情報収集を始めましょう。内定は「試験合格を条件とする内定(条件付き内定)」という形で出されることが一般的です。
Q大手チェーンと個人薬局、どちらが就職しやすいですか?
A一般的に、個人薬局の方が採用基準が緩やかで内定率は高い傾向にあります。ただし、教育研修体制や福利厚生は大手チェーンの方が充実しているケースが多いです。キャリアビジョンに合わせて選択しましょう。
Q面接で「他社の選考状況」を聞かれたらどう答えるべき?
A正直に答えつつ、志望度の高さを示すことが重要です。例:「数社応募しておりますが、貴社の在宅医療への取り組みに最も魅力を感じており、第一志望です」
Q内定をもらえない場合、どこに相談すれば良いですか?
A以下の相談先があります。
大学のキャリアセンター
薬剤師専門の転職エージェント
都道府県薬剤師会の就職相談窓口
ハローワークの専門援助窓口
Q地方での就職も検討すべきですか?
Aキャリアの第一歩として地方就職は有効な選択肢です。実務経験を積んだ後、都市部への転職も可能です。地方で経験を積んでから都市部へ転職成功した事例は多数あります。

まとめ

 

薬剤師の就職難は市場環境の変化によるものですが、適切な戦略と準備で必ず突破できます。重要なのは、早期の活動開始、十分な準備、幅広い応募、そして諦めない姿勢です。本記事で紹介した方法を実践し、理想のキャリアをスタートさせてください。

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監修 薬進キャリアサポート代表エージェント
キャリアコンサルタント

田井 靖人

2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。

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