「薬剤師は飽和状態で将来性がない」「AIに仕事を奪われる」という不安を抱えていませんか。確かに薬剤師を取り巻く環境は変化していますが、データを見ると実態は異なります。厚生労働省の統計では薬剤師の有効求人倍率は2.03倍と全職種平均の約2倍を維持しており、特定の領域では深刻な人材不足が続いています。本記事では、客観的なデータをもとに薬剤師の真の将来性を分析し、これからの時代に求められるスキルと具体的なキャリア戦略を解説します。
薬剤師の現状|本当に飽和しているのか
薬剤師の「飽和状態」という言葉をよく耳にしますが、厚生労働省の統計データを詳しく見ると、実態は単純な飽和とは言えない複雑な状況が浮かび上がります。
有効求人倍率から見る需要の実態
厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、医師・薬剤師等の有効求人倍率は2018年3月の5.35倍から2022年3月には2.03倍へと低下しています。しかしこれは全職種平均の1.21倍(2022年2月)と比較すると約1.7倍高い水準であり、依然として薬剤師1人に対して2社以上の求人がある状況です。
参照元:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年3月分及び令和3年度分)について 参考統計表」
地域による深刻な偏在問題
厚生労働省の統計によると、2022年の人口10万人あたりの薬剤師数は全国平均202.6人ですが、最も多い徳島県244.0人に対し、最も少ない沖縄県は149.4人と大きな地域差があります。都市部では薬剤師が余剰気味である一方、地方では深刻な人材不足が続いており、地方の求人では都市部より年収が100万円以上高く設定されるケースも珍しくありません。
参照元:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
「薬剤師不要論」の真実|本当にAIに代替されるのか
「将来AIに仕事を奪われる」という不安について、客観的に分析します。
AIが代替できる業務・できない業務
AIやロボットが得意とするのは、調剤業務の一部、処方解析、相互作用チェック、在庫管理などのルーチンワークです。厚生労働省「調剤業務のあり方について」(2019年4月)では、薬剤師が対人業務に専念できるよう、対物業務の一部を薬局事務員が担うことを認めています。
しかし、患者の表情や声色から体調の変化を読み取る、複雑な背景を持つ患者に寄り添った服薬指導を行う、医師への疑義照会で適切な代替案を提案するといった高度なコミュニケーション業務は、AIでは代替困難です。AIに仕事を奪われるのではなく、薬剤師がより専門性の高い業務に集中できる環境が整備されているのです。
リフィル処方箋は脅威ではなくチャンス
2022年4月に導入されたリフィル処方箋について、「薬剤師の仕事が減る」と懸念する声がありますが、実態は逆です。厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要」によると、リフィル処方箋により薬剤師は患者の経過観察、症状変化の確認、医師へのフィードバックという、より高度で責任の重い業務を担います。
業種別に見る薬剤師の将来性
薬剤師の働く場所によって、将来性や求められるスキルは大きく異なります。
調剤薬局|専門性への転換が鍵
厚生労働省の統計によると、薬局で働く薬剤師数は2016年の172,142人から2020年には188,982人へと増加しています。2019年に制定された改正薬機法により、薬局は「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」「その他の薬局」の3つに分類され、地域医療や専門医療への貢献が求められています。在宅医療対応やがん専門知識を持つ薬剤師の需要は今後さらに高まるでしょう。
参照元:厚生労働省「令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
ドラッグストア|成長市場での需要拡大
日本チェーンドラッグストア協会のデータによると、2020年度の売上高は7兆2,000億円を突破し、対前年比約6.6%の成長を続けています。調剤併設型店舗の増加により薬剤師需要は高水準を維持しており、調剤とOTC医薬品の知識、セルフメディケーション支援スキルを持つ薬剤師が求められています。
病院|専門性の高い薬剤師への期待
2012年に「病棟薬剤業務実施加算」が新設されて以降、病院での薬剤師の役割は大きく変化しました。2020年の病院薬剤師数は55,948人で、2018年と比較して3.3%増加しています。チーム医療への参画、専門・認定薬剤師資格の取得など、高い専門性が求められています。
参照元:厚生労働省「令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
製薬企業|厳しい雇用環境が続く
製薬企業で働く薬剤師数は2016年から2020年の4年間で2,980人減少しており、特にMRの減少が顕著です。MR白書によると2016年度の63,185人から2020年度には53,586人へと9,599人減少しました。後発医薬品の使用促進政策や薬価改定の影響により、製薬企業での薬剤師の雇用環境は厳しさを増しています。
参照元:厚生労働省「令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
超高齢社会で拡大する薬剤師の新たな役割
2025年には団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」を迎えます。この社会変化は薬剤師に新たな活躍の場を提供します。
在宅医療における薬剤師の重要性急拡大
厚生労働省「厚生労働白書」によると、医療費削減のため病院のベッド数削減が進められており、在宅医療の需要は急速に拡大しています。薬剤師は患者宅を訪問し、服薬状況の確認、残薬整理、服薬指導、医師や看護師との連携などを行います。在宅医療の経験とスキルを持つ薬剤師は今後ますます重宝されるでしょう。
参照元:厚生労働省「厚生労働白書」
セルフメディケーション推進での薬剤師の役割
厚生労働省はセルフメディケーションを推進しており、セルフメディケーション税制も導入されています。軽微な症状についてはOTC医薬品で対処することが推奨される中、薬剤師は健康相談の第一線に立ち、適切なOTC医薬品の選択をサポートする重要な役割を担います。
かかりつけ薬剤師の重要性拡大
高齢者のポリファーマシー(多剤併用)による薬物有害事象のリスクが高まる中、患者の薬歴を一元管理し適切な薬物療法をサポートする「かかりつけ薬剤師」の重要性が増しています。かかりつけ薬剤師になるには「薬局勤務経験3年以上」「同一薬局で週32時間以上勤務」などの要件がありますが、患者から指名される高レベルのかかりつけ薬剤師を目指すことは将来性を高める有効な戦略です。
将来性を高める5つの実践的スキル
将来も価値ある薬剤師であり続けるために、今から身につけるべき実践的スキルを紹介します。
認定・専門薬剤師資格の戦略的取得
がん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師などの専門資格は専門性の証明になります。研修認定薬剤師の資格はかかりつけ薬剤師になるための必須要件でもあり、継続的な学習と資格取得は将来のキャリアの選択肢を広げます。
AIに代替されないコミュニケーション能力
患者の不安に寄り添い、複雑な医療情報をわかりやすく伝え、医師や看護師と円滑に連携する能力は、これからの薬剤師に不可欠です。服薬指導での傾聴力、疑義照会での交渉力、チーム医療での協調性など、多様なコミュニケーションスキルを磨きましょう。
在宅医療対応スキルの習得
在宅医療の現場では、患者宅での薬剤管理、介護者への指導、多職種との連携、緊急時の判断など、薬局内とは異なるスキルが求められます。現在の職場で在宅医療を行っていない場合でも、研修や勉強会に参加し知識とスキルを蓄えておくことをお勧めします。
IT・DXへの適応力強化
電子処方箋、電子薬歴、オンライン服薬指導など、薬剤師業務のIT化・DX化は急速に進んでいます。厚生労働省も医療DXを推進しており、新しいシステムやツールに抵抗なく適応し業務効率化に活用できる能力は必須です。
マネジメント能力の向上
令和元年の改正薬機法により、管理薬剤師になるには一定の能力と経験が求められるようになりました。スタッフの教育・指導、業務の効率化、コンプライアンス管理など、マネジメントスキルを持つ薬剤師の価値は高いです。
参照元:厚生労働省「令和元年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について」
まとめ
薬剤師の将来に不安を感じるのは自然なことですが、データを見れば薬剤師の需要は依然として高く、特に専門性の高い領域や地方では深刻な人材不足が続いています。重要なのは時代の変化に対応したスキルを身につけ、価値を提供できる薬剤師であり続けることです。AI・DXの進展や超高齢社会の到来を脅威ではなくチャンスと捉え、継続的に学び成長する薬剤師こそが将来も活躍し続けるでしょう。あなたの薬剤師としてのキャリアに不安や迷いがあるなら、まずは専門家に相談してみませんか。薬剤師転職支援サービスでは、業界を知り尽くしたキャリアアドバイザーが、あなたの強みを活かせる最適なキャリアプランを一緒に考えます。
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田井 靖人
2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。