薬剤師としてのキャリアに迷いはありませんか?「このまま今の職場で働き続けていいのだろうか」「専門性を高めたいけど、どう進めばいいかわからない」そんな悩みを抱えている薬剤師は少なくありません。
医療の高度化とともに薬剤師の役割も多様化し、キャリアの選択肢は広がっています。だからこそ、自分に合ったキャリアプランを描くことが、充実した薬剤師人生を送るカギとなります。本記事では、職場別・年代別の具体的なキャリアプラン例から、実現に向けた具体的なステップまで、薬剤師のキャリア形成に必要な情報を網羅的に解説します。
薬剤師にキャリアプランが必要な3つの理由
薬剤師は資格職であり、一定の職域が保証されているため、これまでキャリアプランを意識せずに働いてきた方も多いでしょう。しかし、医療環境の変化と薬剤師の役割拡大により、キャリアプランの重要性が高まっています。
理由1:薬剤師の供給過多時代への備え
厚生労働省が公表している「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2020年時点で届出薬剤師数は約32万人に達しています。薬剤師国家試験の合格者数は年間約9,000人で推移しており、薬剤師数は今後も増加が見込まれます。
一方で、調剤のAI化やオンライン服薬指導の普及など、業務効率化が進んでいます。将来的に薬剤師の需給バランスが変化する可能性を考えると、他の薬剤師との差別化を図り、専門性や強みを明確にすることが重要です。
理由2:働き方の多様化への対応
薬剤師の活躍の場は、調剤薬局や病院だけではありません。在宅医療、企業の医薬品開発、メディカルライター、オンライン薬局など、新しい働き方が次々と生まれています。
自分の志向性や強みを把握し、どのフィールドで専門性を発揮したいのかを明確にすることで、より充実したキャリアを築けます。
理由3:ライフステージの変化への対応
結婚、出産、育児、介護など、ライフステージの変化は誰にでも訪れます。特に女性薬剤師の場合、これらのライフイベントとキャリアをどう両立させるかが重要な課題です。
長期的なキャリアプランを描いておくことで、ライフステージの変化に柔軟に対応しながら、薬剤師としてのキャリアを継続できます。
職場別キャリアプラン:調剤薬局編
調剤薬局は薬剤師の就業先として最も多く、約6割の薬剤師が従事しています。ここでは、調剤薬局でのキャリアプランの代表的なパターンを紹介します。
調剤薬局でのキャリアには、管理職を目指すマネジメント志向、専門性を追求するスペシャリスト志向、独立開業を見据えた経営者志向など、複数の道があります。
パターン1:管理薬剤師・エリアマネージャーへの道
一般薬剤師として3~5年の経験を積んだ後、管理薬剤師を目指すキャリアパスです。管理薬剤師は、薬機法で定められた医薬品等の管理責任者であり、店舗運営や従業員の指導も担当します。
さらに経験を積むと、複数店舗を統括するエリアマネージャーやSV(スーパーバイザー)へのステップアップも可能です。エリアマネージャーは、担当エリアの店舗の経営管理、人材育成、品質管理などを行います。
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は約580万円ですが、管理職になると年収700万円以上を目指すことも可能です。
パターン2:専門薬剤師としてのスペシャリストの道
特定の疾患領域や患者層に特化した専門性を高めるキャリアパスです。認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得し、がん、糖尿病、在宅医療などの分野で専門性を発揮します。
地域のかかりつけ薬剤師として患者さんと継続的に関わりながら、服薬指導の質を高め、患者さんのQOL向上に貢献します。研修会の講師や、後進の育成にも携わることができます。
パターン3:独立開業への道
調剤薬局での経験を活かし、将来的に独立開業を目指すキャリアパスです。一般薬剤師として5~10年の経験を積み、管理薬剤師として店舗運営や経営の実務を学びます。
開業には、調剤や服薬指導のスキルに加えて、経営知識、マーケティング、人材マネジメントなど、幅広い能力が求められます。開業資金の準備、立地選定、医療機関との連携構築など、計画的な準備が必要です。
職場別キャリアプラン:病院編
病院薬剤師は、チーム医療の一員として高度な医療に携わることができます。調剤薬局とは異なる専門性とキャリアパスがあります。
病院薬剤師のキャリアは、臨床業務の深化、薬剤部門の管理職、研究・教育職など、多様な選択肢があります。
パターン1:臨床専門薬剤師としての道
病院薬剤師として入職後、病棟業務や調剤業務を経験し、特定の診療科や疾患領域の専門性を高めます。がん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師、精神科専門薬剤師など、高度な専門資格を取得します。
チーム医療の中核として、医師や看護師と協働し、薬物療法の最適化に貢献します。症例検討会や学会発表を通じて、臨床研究にも携わることができます。
パターン2:薬剤部長・管理職への道
病院薬剤師として10~15年の経験を積み、主任、副部長、部長とステップアップします。薬剤部門全体のマネジメント、病院経営への参画、医薬品の適正使用推進などを担います。
厚生労働省の「第23回医療経済実態調査」によると、病院の薬剤部長の平均年収は約900万円とされています。
パターン3:研究・教育職への道
病院での臨床経験を活かし、大学や研究機関で研究職や教育職を目指すキャリアパスです。博士号(薬学博士)を取得し、臨床薬学の研究者として活躍します。
薬学部の教員として学生の教育に携わったり、臨床研究を通じて新しい薬物療法の開発に貢献したりします。
職場別キャリアプラン:ドラッグストア編
ドラッグストアは、調剤業務とOTC販売を組み合わせた幅広い業務が特徴です。店舗運営や経営に関わる機会も多く、ビジネススキルを磨けます。
ドラッグストアでのキャリアは、店舗マネジメント、本部職、商品企画など、小売業ならではの多様な道があります。
パターン1:店舗管理職・エリアマネージャーへの道
一般薬剤師として2~3年の経験を積んだ後、管理薬剤師や店長を目指します。店舗の売上管理、スタッフの育成、商品の発注管理など、店舗運営全般を担当します。
さらに複数店舗を統括するエリアマネージャーやブロック長へとキャリアアップし、地域戦略の立案や新規出店の企画にも関わります。
パターン2:本部職・商品企画への道
店舗での経験を活かし、本部の商品企画、マーケティング、教育研修などの部門で活躍するキャリアパスです。OTC医薬品の仕入れ戦略、プライベートブランドの開発、従業員の教育プログラム作成などを担当します。
小売業の経営戦略に携わりながら、薬剤師としての専門性も活かせるポジションです。
パターン3:健康サポート薬局の専門職への道
地域住民の健康相談や予防医療に特化した健康サポート薬局で、専門性を発揮するキャリアパスです。OTC医薬品の適切な選択支援、健康相談、セルフメディケーションの推進などに携わります。
栄養指導や運動指導などの資格も取得し、トータルヘルスケアの専門家として活躍します。
職場別キャリアプラン:企業編
製薬企業やCRO、医薬品卸など、企業で働く薬剤師のキャリアは、調剤業務から離れた専門職としての道です。
企業薬剤師は、医薬品の開発、品質管理、学術情報提供など、製薬産業を支える重要な役割を担います。
パターン1:医薬品開発職(CRA・CRC)への道
臨床開発モニター(CRA)や治験コーディネーター(CRC)として、新薬の臨床試験に携わります。CRAは製薬企業やCRO(医薬品開発業務受託機関)に所属し、治験が適切に実施されているかを監視します。
CRCは医療機関に所属し、治験に参加する患者さんのサポートや医師と製薬企業の調整を行います。薬学的知識を活かしながら、新薬開発という社会貢献度の高い仕事に携われます。
パターン2:MR(医薬情報担当者)への道
製薬企業のMRとして、医師や薬剤師に医薬品の適正使用情報を提供します。薬学的知識を基盤に、営業力やプレゼンテーション能力を磨きます。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、MRの平均年収は約570万円とされています。
パターン3:薬事・品質管理への道
医薬品の品質管理、薬事申請、製造管理などの業務に携わります。GMP(医薬品製造管理基準)やGQP(医薬品品質管理基準)に基づき、医薬品の品質を保証します。
薬機法の知識を深め、薬事申請や承認審査に関わる業務を担当します。企業の信頼性保証部門の責任者として活躍する道もあります。
年代別キャリアプラン:20代の過ごし方
20代は薬剤師としての基礎を固め、将来のキャリアの方向性を探る重要な時期です。この時期の経験が、その後のキャリアを大きく左右します。
20代では、幅広い経験を積み、自分の強みと志向性を見極めることが重要です。
20代前半(新卒~3年目):基礎スキルの習得
新卒から3年間は、薬剤師としての基本スキルを徹底的に身につける時期です。調剤業務、服薬指導、薬歴記録、疑義照会など、日常業務を確実にこなせるようになることが最優先です。
この時期は、多様な処方箋や患者さんに対応できる経験を積むことが重要です。わからないことは積極的に先輩に質問し、勉強会や研修会にも参加しましょう。
20代後半(4年目~):専門性の方向性を模索
3年以上の経験を積んだら、自分の興味や適性に基づいて、専門性の方向性を考え始めます。「在宅医療に興味がある」「がん薬物療法を学びたい」など、具体的な分野を見つけましょう。
認定薬剤師の資格取得を目指したり、専門分野の勉強会に参加したりして、知識を深めます。また、管理職に興味があるなら、後輩の指導やチームリーダーの経験を積むことも重要です。
年代別キャリアプラン:30代の過ごし方
30代は、専門性を確立し、管理職やスペシャリストとしてのキャリアを本格化させる時期です。ライフイベントとキャリアの両立も考える必要があります。
30代では、20代で培った経験を基盤に、より高度な専門性やマネジメント能力を身につけます。
30代前半:専門性の確立とキャリアの選択
30代前半は、専門薬剤師や認定薬剤師の資格を取得し、特定の分野でのエキスパートとしての地位を確立する時期です。あるいは、管理薬剤師として店舗運営やスタッフマネジメントの経験を積みます。
ライフイベント(結婚、出産など)を迎える人も多い時期です。ワークライフバランスを考慮しながら、長期的なキャリアプランを見直すことも大切です。
30代後半:リーダーシップの発揮
30代後半は、薬剤部門のリーダーやエリアマネージャーなど、より大きな責任を担うポジションに就く時期です。組織全体を見渡す視点を持ち、経営的な判断も求められます。
後進の育成にも積極的に関わり、自分の経験や知識を次世代に伝えていきます。学会発表や研修会の講師など、対外的な活動の機会も増えてきます。
年代別キャリアプラン:40代以降の過ごし方
40代以降は、これまでのキャリアの集大成として、より高度な専門性や広範なマネジメントを担う時期です。
40代以降は、薬剤師としての経験を最大限に活かし、組織や地域医療への貢献度を高めます。
40代:経営層や専門家としての活躍
40代は、薬剤部長やエリア統括など、経営層に近いポジションで活躍します。あるいは、専門薬剤師として臨床研究や後進の育成に注力し、業界全体への貢献を目指します。
独立開業を実現する薬剤師も多い年代です。これまでの経験と人脈を活かし、自分の理想とする薬局経営を実現します。
50代以降:次世代への継承と新たな挑戦
50代以降は、豊富な経験と知見を次世代に継承することが重要な役割となります。組織の顧問や相談役として、若手薬剤師の育成や組織の方向性に関するアドバイスを行います。
また、薬局の経営継承、講演活動、執筆活動など、これまでとは異なる新たな挑戦をする薬剤師もいます。定年後も薬剤師として働き続けることができるのも、資格職の強みです。
キャリアプランの立て方:5つのステップ
ここまで様々なキャリアプランを紹介してきましたが、では実際にどのようにキャリアプランを立てればよいのでしょうか。具体的な5つのステップを解説します。
実現可能なキャリアプランを立てるには、自己分析から始めて、具体的な行動計画に落とし込むことが重要です。
ステップ1:キャリアの棚卸しと自己分析
まずは、これまでの経験を振り返り、自分の強みと弱みを整理します。担当してきた業務、取得した資格、得意な領域、苦手な業務などをリストアップしましょう。
また、「患者さんと深く関わりたい」「経営に興味がある」「新しい分野に挑戦したい」など、自分の価値観や志向性も明確にします。
ステップ2:5年後・10年後のビジョンを描く
5年後、10年後に「どんな薬剤師になっていたいか」「どんな働き方をしていたいか」を具体的にイメージします。「がん専門薬剤師として患者さんのサポートをしている」「管理薬剤師として後輩を育てている」など、できるだけ具体的に描きましょう。
ライフイベント(結婚、出産、育児、介護など)も考慮に入れ、仕事とプライベートの両立も視野に入れます。
ステップ3:現状とのギャップを分析する
理想の姿と現在の自分とのギャップを分析します。「専門薬剤師になるには何が足りないか」「管理職になるにはどんなスキルが必要か」を洗い出します。
このギャップが、これから埋めるべき課題であり、キャリアプランの核心部分です。
ステップ4:短期・中期・長期の目標を設定する
ギャップを埋めるための具体的な目標を、期間別に設定します。
- 短期目標(1年以内):認定薬剤師の研修受講、後輩指導の担当など
- 中期目標(3~5年):専門薬剤師の資格取得、管理薬剤師への昇進など
- 長期目標(10年):薬剤部長、独立開業、専門領域の第一人者など
目標は数値化したり、期限を明確にしたりすることで、達成しやすくなります。
ステップ5:定期的な見直しと軌道修正
キャリアプランは一度立てたら終わりではありません。半年~1年ごとに進捗を確認し、必要に応じて修正します。
ライフイベントの変化、職場環境の変化、新たな興味の発見など、状況が変われば柔軟にプランを見直すことが大切です。
キャリアアップを実現する3つの方法
キャリアプランを立てても、それを実現するための具体的な行動がなければ、絵に描いた餅です。ここでは、キャリアアップを実現するための方法を紹介します。
キャリアアップには、専門性の向上、マネジメントスキルの習得、そして環境の見直しが重要です。
方法1:認定薬剤師・専門薬剤師の資格取得
薬剤師としての専門性を客観的に証明できるのが、認定薬剤師や専門薬剤師の資格です。日本薬剤師研修センターが認定する「研修認定薬剤師」は、継続的な学習を証明する基本的な資格です。
さらに専門性を高めるなら、日本病院薬剤師会の「がん薬物療法認定薬剤師」「感染制御専門薬剤師」、日本医療薬学会の「医療薬学専門薬剤師」など、特定領域の資格取得を目指しましょう。
資格取得には、実務経験、研修受講、症例報告、試験合格などの要件があります。計画的に準備を進めることが重要です。
方法2:マネジメントスキルの習得
管理職を目指すなら、マネジメントスキルの習得が不可欠です。後輩の指導、チームリーダーの経験、店舗運営への参画など、実務を通じてマネジメント経験を積みましょう。
また、経営学やマーケティング、労務管理などの知識も身につけると、より幅広い視点で業務に取り組めます。外部のマネジメント研修やMBA取得を検討するのも一つの方法です。
方法3:転職による環境の見直し
現在の職場では理想のキャリアを実現できないと感じたら、転職も選択肢の一つです。専門薬剤師を目指すなら症例数の多い病院、管理職を目指すなら昇進制度が明確な企業など、目標に合った職場を選びましょう。
転職を検討する際は、薬剤師専門の転職支援サービスを活用すると、自分のキャリアプランに合った求人を効率的に見つけられます。
まとめ
薬剤師のキャリアプランは、調剤薬局、病院、ドラッグストア、企業など、職場によって大きく異なります。また、20代、30代、40代と年代によっても、果たすべき役割や目指すべき方向性は変わってきます。
重要なのは、自分の価値観や志向性を理解し、将来のビジョンを明確に描くことです。そして、そのビジョンを実現するための具体的な行動計画を立て、継続的に実行していくことが成功の鍵となります。
キャリアプランは固定的なものではありません。ライフイベントや環境の変化に応じて、柔軟に見直していくことも大切です。充実した薬剤師人生を送るために、今日から自分のキャリアプランを考えてみませんか?
あなたのキャリアプランを実現する転職サポート
理想のキャリアを実現できる職場をお探しですか?当社の薬剤師専門転職支援サービスでは、あなたのキャリアプランに合わせた求人をご紹介します。専門のキャリアアドバイザーが、あなたの強みや志向性を丁寧にヒアリングし、最適な職場をご提案。面接対策から条件交渉まで、転職活動を全面的にサポートします。
まずは無料のキャリア相談から始めてみませんか?
まずはキャリアの可能性を知る相談から
キャリア相談・面談依頼はこちらから
田井 靖人
2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。