パート薬剤師は、ライフスタイルに合わせて柔軟に働ける魅力的な働き方です。厚生労働省の調査によると、パート薬剤師の平均時給は2,845円と、全職種の平均時給1,412円の約2倍の水準を誇ります。子育てや介護との両立、ワークライフバランスの実現など、多様なニーズに応えられるパート薬剤師の働き方について、時給相場から求人選びのコツまで詳しく解説します。
パート薬剤師とは?基本的な働き方を理解しよう
パート薬剤師の定義と雇用形態
パート薬剤師は、パートタイム労働法により「1週間の所定労働時間が、同じ職場で雇用されている通常の労働者(正社員など)と比べて短い労働者」と定義されています。例えば、正社員が週40時間勤務する薬局の場合、40時間未満の勤務であればパート薬剤師として扱われます。
基本的には時給制で給与が支払われ、勤務日数や勤務時間を自分のライフスタイルに合わせて調整できる点が大きな特徴です。直接雇用のため、派遣薬剤師と異なり同じ職場で長期的に働けるメリットがあります。
正社員・派遣との違い
パート薬剤師は正社員や派遣薬剤師と比較して、それぞれ異なる特徴があります。
正社員は雇用期間の定めがなく、月給制や年俸制で賞与も支給されます。一方、パートは有期雇用が多く、時給制のため勤務時間に応じた給与となります。しかし、2020年4月より施行された「同一労働同一賃金」により、正社員と同等の職務内容を求める場合は待遇に差を設けてはならないとされています。
派遣薬剤師は時給がパートよりも500円ほど高く、3,500円〜4,000円の求人も珍しくありません。ただし、派遣は同じ職場で3年を超えて勤務できない制限があり、契約が切れるたびに職場が変わる可能性があります。パートは同じ職場で長期的に働けるため、人間関係を構築しやすく、安定した雇用を求める方に適しています。
参考:厚生労働省「同一労働同一賃金」
パート薬剤師の時給相場と収入シミュレーション
全国平均時給と職場別の相場
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、パート薬剤師の平均時給は2,845円です。これは全職種のパートタイム労働者の平均時給1,412円と比較すると約2倍の水準であり、短時間で効率よく収入を得られる働き方といえます。
職場別に見ると、一般的に調剤薬局やドラッグストアの方が病院やクリニックに比べて時給が高い傾向にあります。
参照:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
調剤薬局
- 時給:2,000円〜2,500円程度
- シフト制が多く、9:00〜13:00など個別に定時を決められる職場もある
- 処方箋枚数に対する薬剤師数が適切な職場を選ぶことが重要
ドラッグストア
- 時給:2,200円〜2,600円程度
- 他の職場と比べてベースが高い傾向
- 20時以降の夜間帯勤務や日祝勤務時は時給が高くなる企業も多い
- 土日祝営業、夜間営業もあるためシフト制や早番遅番に対応できる方を優先的に採用
病院
- 時給:1,800円〜2,200円程度
- 終業時間が17時台も珍しくなく、働きやすい環境が整っている
- 医師、看護師との連携が必要で、調剤薬局やドラッグストアと労働環境が大きく異なる
勤務パターン別の収入シミュレーション
時給2,200円を基準とした場合の月収・年収シミュレーションを見てみましょう。
フルタイム勤務(1日8時間×週5日)
- 月収:約35.2万円
- 年収:約422万円
週3日勤務(1日8時間×週3日)
- 月収:約21.1万円
- 年収:約253万円
短時間勤務(1日4時間×週3日)
- 月収:約10.6万円
- 年収:約127万円
短時間勤務(1日4時間×週2日)
- 月収:約7万円
- 年収:約84万円
このように、勤務時間や日数を調整することで、扶養の範囲内での勤務から準フルタイムまで、さまざまな働き方が可能です。
地域による時給の違い
薬剤師の時給には地域差があり、都市部よりも地方の時給が高い傾向にあります。これは、都市部の薬学部を卒業した後そのまま都市部で就職する薬剤師が多く、地方が慢性的な人手不足に陥りやすいためです。
また、処方薬は薬剤師しか扱えず、1人の薬剤師が1日に扱う処方箋は40枚が目安とされており、企業は高時給を提示してでも人材を確保したいと考えています。
パート薬剤師の職場別に見る仕事内容
パート薬剤師の業務内容は基本的に正社員と同様ですが、職場によって特徴があります。
調剤薬局での業務
調剤薬局では、調剤、監査、投薬業務が中心となります。店舗によっては在宅業務や予製業務にも携わることがあります。
主な業務内容は正社員と変わりませんが、パートの場合は勤務時間が限られているため、開局・閉局業務や棚卸し、会議などの管理業務は正社員が担当することが多い傾向にあります。
シフト制を採用している薬局が多く、9:00〜13:00、14:00〜18:00など、自分のライフスタイルに合わせた時間帯を選べる職場も増えています。
ドラッグストアでの業務
ドラッグストアでは、調剤業務に加えて、OTC医薬品の販売、健康相談、商品の品出しや整理、レジ業務など、幅広い業務に携わることがあります。
販売スタッフを兼ねるケースが多く、接客要素が強くなる傾向にあります。調剤など薬剤師ならではの仕事にこだわりがある場合は、事前に仕事内容を確認することが重要です。
土日祝日や夜間の営業も多いため、シフトの柔軟性が求められますが、その分時給が高めに設定されている傾向があります。
病院での業務
病院でのパート薬剤師は、主に中央業務(内服・注射薬の調剤)が中心となります。外来を担当することが多く、入院患者の業務を行う場合は、注射剤の混合などの専門的な業務の経験を積めることもあります。
医師や看護師とチームとなって患者のケアにあたるチーム医療の経験も積めるのが特徴です。また、医療従事者のために託児所が完備されている病院も多く、保育園への送迎時間を短縮できるメリットがあります。
定時が17時台の施設も多く、残業が発生しにくいため、プライベートとの両立がしやすい環境といえます。
パート薬剤師のメリット
ワークライフバランスを実現しやすい
パート薬剤師の最大のメリットは、勤務日数や勤務時間を自分のライフスタイルに合わせて調整できることです。
子育て中の方なら「保育園のお迎えに間に合う17時まで」、介護と両立したい方なら「週3日午前のみ」など、自分の都合に合わせた働き方が可能です。正社員のような残業や休日出勤の強制もなく、プライベートを優先した生活が送れます。
短時間でも高収入を得られる
厚生労働省のデータによると、パート薬剤師の平均時給2,845円は、全職種の平均時給の約2倍です。週3日、1日4時間の勤務でも年収100万円以上を得ることができ、効率的に収入を得られます。
時給2,000円で週4日、1日6時間勤務なら年収は約230万円となり、パートとしては十分な収入といえるでしょう。
転勤や異動がほとんどない
パート薬剤師は基本的に転勤や異動がありません。住み慣れた地域や慣れ親しんだ環境で働き続けられるため、人生プランが立てやすいというメリットがあります。
転職や次の仕事探しに労力をかける必要もなく、同じ職場で長期的に働けるため、人間関係も構築しやすい環境です。
円満退職しやすい
パートは有期雇用契約が多いため、契約期間満了のタイミングで退職することで、円満に職場を離れやすい特徴があります。
家族の転勤や介護、子育てなどライフステージの変化に合わせて、比較的スムーズに退職できる点は、パート薬剤師の大きなメリットといえます。
未経験業務へのチャレンジがしやすい
病院、ドラッグストア、調剤薬局などのパート募集は、薬剤師資格さえあれば現場未経験歓迎の場合も多く、未経験業務へのチャレンジがしやすい環境です。
ブランクがある方や、これまでとは異なる職場で新しい経験を積みたい方にも、パートという働き方は適しています。
社会保険や有給休暇も取得可能
一定の条件を満たせば、パート薬剤師でも社会保険に加入できます。2016年10月の法改正以降、短時間労働者にも社会保険の加入要件が拡大され、2024年10月にはさらなる拡大が行われています。
社会保険加入条件(2024年10月以降)
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が2ヶ月以上見込まれる
- 手当・賞与を除く月額賃金が8.8万円以上
- 学生でないこと
- 従業員数が51人以上の企業
雇用保険加入条件
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上雇用される見込みがある
有給休暇についても、勤務開始から半年経過した時点で付与されます。週の所定労働時間が30時間未満で週4日以下の勤務の場合、勤務日数に応じた日数が付与されます。
正社員登用の可能性がある
パートでの仕事ぶりが評価されれば、正社員に登用されることもあります。派遣薬剤師は「紹介予定派遣」でなければ正社員登用はほとんどありませんが、パート薬剤師は希望すれば正社員に登用される可能性があります。
長く働きたい方、いずれはキャリアアップしたい方は、求人を選ぶ際に正社員登用実績を確認しておくとよいでしょう。
パート薬剤師のデメリットと対策
収入が不安定になりやすい
パート薬剤師は時給制のため、勤務時間分の給与しか得られません。年末年始やゴールデンウィークなど職場の休日が増えたり、子どもの体調不良で看病のため臨時休暇を取ったりすると、勤務時間が少なくなり収入が減少します。
対策
- 勤務可能日数を多めに設定しておく
- 複数の職場でのダブルワークを検討する
- 扶養の範囲内で働く場合は、年間の収入計画を立てておく
福利厚生に制限がある場合も
企業が提供する福利厚生は、正社員とパートでは異なる場合があります。特に家賃補助や家族手当、保養所の利用といった法定外の福利厚生には制限が設けられているケースが一般的です。
ただし、「同一労働同一賃金」の導入により、以前と比べて待遇差は縮小傾向にあります。求人を探す時点で福利厚生の内容をしっかり確認することが重要です。
雇用が不安定になるリスク
パートは基本的に有期雇用のため、雇用期間が設けられています。産休育休中の職員の補充のために臨時で採用された場合などは、短期間で終了することがあります。
職場側の都合で人員削減を行う際にも、正社員よりもパートが対象になりやすく、長期雇用がされにくい点はデメリットといえます。
対策
- 雇用契約書で契約期間や更新条件を確認する
- 複数の薬局チェーンなど、店舗数が多い企業を選ぶ
- スキルアップを継続し、必要とされる薬剤師を目指す
教育・研修の機会が少ない
正社員と比べると、パート薬剤師は教育・研修の機会が少ない傾向にあります。厚生労働省の調査によると、正社員以外に教育訓練を実施している企業は半数に満たないという結果が出ています。
長期就労を前提とした正社員には企業も研修などを通じて教育投資をしますが、ライフステージの変化などにより退職する可能性が高いパートに対しては、教育・研修制度や機会を整えていない企業も多いようです。
対策
- 研修制度が充実している企業を選ぶ
- eラーニングなど自主的に学べる環境がある職場を探す
- 認定薬剤師取得の補助制度がある企業を選ぶ
キャリアアップが難しい
パート薬剤師は重要な役職につくことはほとんどありません。店舗の方針を決めたり、薬局や薬剤部のやり方を決めたりするのは主に正社員であり、パート薬剤師は決められた仕事をこなしていくことが多いでしょう。
勤務時間が短く勤務日数が少ない場合が多いため、仕事を幅広く任せてもらうことが難しい傾向にあります。
対策
- 将来的に正社員を目指す場合は、正社員登用実績のある職場を選ぶ
- パートでもスキルアップできる環境(在宅業務、専門薬剤師の取得支援など)を探す
- パートという働き方のメリットを活かし、プライベートの充実を優先する
扶養の範囲内で働きたい方への注意点
パート薬剤師は時給が高いため、扶養の範囲内で働きたい場合は労働時間の調整が重要です。
扶養の壁を理解しよう
103万円の壁
- 年収103万円を超えると、配偶者の所得税が増加
- 時給2,000円、週2日、1日4時間勤務で年収約77万円
130万円の壁
- 年収130万円を超えると、自分で社会保険料を支払う必要がある
- 時給2,000円、週3日、1日4時間勤務で年収約115万円
150万円の壁
- 年収150万円を超えると、配偶者特別控除が段階的に減少
- 時給2,000円、週3日、1日6時間勤務で年収約173万円
自分が予定している週の労働時間から「壁」をしっかり意識し、必要に応じて労働時間を調整することが大切です。一方で、扶養を気にせず働いて高収入を得ている薬剤師も多いため、自身のライフスタイルに合わせて考えましょう。
パート薬剤師の求人選びで重視すべきポイント
処方箋枚数と薬剤師の人数バランス
処方箋の枚数に対して薬剤師の人数が適切かは必ずチェックしましょう。人員に余裕がない職場では、突発的な休みに対応しづらく、希望するシフトで働けない可能性があります。
また、一人当たりの処方箋枚数が多すぎる職場では、業務負担が大きく残業が発生しやすくなります。面接時に1日の処方箋枚数や薬剤師の配置状況を確認することをおすすめします。
パート薬剤師の在籍状況
実際にパート薬剤師が働いているかも気になるポイントです。パート薬剤師同士で助け合えますし、職場もパート薬剤師の働き方に慣れています。
特に子育て中のママ薬剤師の場合、同じくパートのママ薬剤師が在籍していれば子育てへの理解もあり、子どもの急な発熱などで休む時も職場全体でフォローしてくれる可能性が高いでしょう。
福利厚生の充実度と利用実績
福利厚生は充実していても、実際に使えなければ意味がありません。パート薬剤師への産休・育休の利用実績や、研修制度の充実度はチェックしたいポイントです。
厚生労働省の調査によると、在職中に出産した女性の育休取得率は87.9%に達しており、社会全体で産休・育休制度を取得しやすい環境になってきています。パート薬剤師も条件を満たせば産休・育休を取得できるため、利用実績のある職場を選ぶと安心です。
参考:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」
店舗数と応援体制
店舗数が多い企業であれば、他店舗にヘルプを要請できるためシフトの自由度が上がります。また、急な欠勤時にも他店舗からフォローしてもらえる体制があると、より働きやすい環境といえます。
中規模以上の企業規模のドラッグストアや調剤薬局チェーンは、福利厚生面や勤務ルールなどがきっちり決まっていることが多く、安心して働ける環境が整っている傾向にあります。
勤務条件の柔軟性
「週3日以上」「9:00〜18:00の間で応相談」など、勤務条件に柔軟性がある求人は、ライフスタイルの変化にも対応しやすくおすすめです。
特に子育て中の方は、子どもの成長に合わせて勤務時間を調整できる職場を選ぶと、長期的に働きやすくなります。
パート薬剤師の時給を上げるための方法
高時給の職場を選ぶ
前述の通り、ドラッグストアは調剤薬局や病院と比べて時給が高い傾向にあります。また、地方の方が都市部よりも時給が高い傾向にあるため、地域選びも重要です。
夜間帯(20時以降)や土日祝日の勤務は、時給が高く設定されていることが多いため、これらの時間帯に勤務できる場合は収入アップにつながります。
勤務の柔軟性をアピール
遅い勤務時間や土日祝日など、シフトの融通が利く勤務が可能な方は、薬局側からより採用したいと評価されることが多く、時給交渉もしやすくなります。
「土日どちらかは勤務可能」「繁忙期は週4日勤務も可能」など、柔軟な働き方ができることをアピールすると、より良い条件で採用される可能性が高まります。
スキルアップを継続する
認定薬剤師や専門薬剤師などの資格を取得することで、時給アップにつながることがあります。また、在宅業務や専門的な調剤業務ができる薬剤師は、より高い評価を受けやすくなります。
パートでもスキルアップを継続し、より条件の良い職場への転職を目指すことも、収入アップの有効な方法です。
定期的な時給見直しを交渉
働き始めてからの勤務態度やスキルを評価して時給が上がる職場もあります。入職時だけでなく、1年後、2年後と定期的に時給の見直しを交渉することも重要です。
ただし、時給が高くなることで業務負荷が高くなる可能性や、欠員時の応援や残業の依頼を優先的に受けることもあるため、バランスを考えることが大切です。
パート薬剤師と産休・育休の取得
パートでも産休・育休は取得可能
産休・育休は雇用形態に関係なく、条件を満たすことで取得できます。
産休(産前産後休業)
- 出産予定日の6週間前から出産日の翌日から8週間の期間に取得可能
- 出産育児一時金として、加入している健康保険から1児につき42万円が支給
育休(育児休業)
- 原則として子どもが1歳になるまで取得可能
- 一定条件下で子どもが最長2歳になるまで延長可能
- 雇用保険から育児休業給付金が支給(休業開始時賃金の67%(最初の180日)、その後50%)
パート薬剤師が育休を取得するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
- 子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる
- 子どもの2歳の誕生日の前々日までに労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでない
産休・育休の利用実績を確認しよう
福利厚生が充実していても、実際に利用できなければ意味がありません。求人を選ぶ際は、パート薬剤師の産休・育休取得実績があるかを確認することが重要です。
実績がある職場であれば、制度を利用しやすい環境が整っており、復帰後も働きやすい可能性が高いでしょう。
まとめ
パート薬剤師は、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができる魅力的な選択肢です。平均時給2,845円という高水準の収入を得られながら、子育てや介護との両立、ワークライフバランスの実現が可能です。職場選びでは、処方箋枚数と薬剤師数のバランス、福利厚生の充実度、パート薬剤師の在籍状況などを確認することが重要です。当社の薬剤師転職支援サービスでは、あなたの希望に合った求人を専任のコンサルタントがご紹介します。パート薬剤師としてのキャリアをお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まずはキャリアの可能性を知る相談から
キャリア相談・面談依頼はこちらから
田井 靖人
2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。