薬剤師の転職理由は?履歴書・面接での伝え方

薬剤師 転職 理由

薬剤師として働くなかで、転職を考えたことがある方は少なくありません。実際、国家資格を持つ薬剤師にとって転職は珍しいことではなく、キャリアアップやライフステージの変化に応じて職場を変える方が多くいます。この記事では、薬剤師が転職を決意する理由を実データとともに解説し、転職を成功させるための具体的なポイントをご紹介します。

薬剤師の転職動向|約6割が転職意向あり

 

薬剤師の転職市場は活発で、多くの薬剤師が転職を視野に入れながら働いています。まずは、最新の調査データから薬剤師の転職動向を確認しましょう。

薬剤師の転職意向率と年代別傾向

リクルートメディカルキャリアが実施した調査によると、転職意向のある薬剤師は全体の57.9%に達しています。さらに、1年以内に何らかの転職活動を行った薬剤師は29.9%という結果が出ています。

年代別に見ると、60歳以上を除く各年代で転職意向のある薬剤師が半数を超えており、最も転職意向が高かったのは20代で66.7%でした。若手薬剤師ほど積極的にキャリアアップや待遇改善を求める傾向にあることがわかります。

引用元:PR TIMES「薬剤師の転職活動に関する動向調査

薬剤師に転職が多い背景

薬剤師に転職が多い理由として、国家資格を持つ専門職であることが挙げられます。資格があれば全国どこでも働けるため、転職先の選択肢が豊富です。また、調剤薬局やドラッグストア、病院など、さまざまな職場で薬剤師の需要があり、転職市場が活発であることも転職しやすい環境を作っています。

さらに、小規模な薬局では昇進ポストが限られているため、キャリアアップを目指す場合は転職が必要になるケースも少なくありません。こうした業界特有の事情が、薬剤師の転職を後押ししているのです。

薬剤師が転職する理由

 

薬剤師が実際にどのような理由で転職を決意しているのか、調査データをもとに詳しく見ていきましょう。

引用元:PR TIMES「薬剤師の転職活動に関する動向調査」

第1位:業務負荷が高い(39.4%)

リクルートメディカルキャリアの調査では、転職を考え始めたきっかけとして「業務負荷が高い」が39.4%で最多となりました。処方箋枚数が多く残業が常態化している職場や、人手不足で一人当たりの負担が大きい環境では、心身ともに疲弊してしまいます。

特に調剤薬局や病院では、繁忙期には休憩時間もまともに取れないほど忙しいことがあり、長期的に働き続けることが難しいと感じる薬剤師が多いようです。ドラッグストアの場合は土日祝日も営業しており、夜遅くまでのシフト制で働くため、プライベートとのバランスが取りにくいと感じる方もいます。

第2位:給与への不満(38.6%)

給与面での不満も転職理由の上位に挙げられており、38.6%の薬剤師が給与に不満を感じていると回答しています。薬剤師は新卒時の給与は一般企業より高めですが、その後の昇給ペースは緩やかで、特に調剤薬局や病院では昇給額が少ない傾向があります。

また、業務負荷の高さに対して給与が見合っていないと感じる薬剤師も少なくありません。調剤報酬が法律で定められているため、薬局側も大幅な給与アップが難しいという構造的な問題も影響しています。

同じ薬剤師業務でも職場によって年収に差があることを知り、より好条件の職場への転職を考えるケースが多いようです。

第3位:人間関係への不満(33.3%)

人間関係のトラブルは、33.3%の薬剤師が転職理由として挙げている重要な要素です。調剤薬局は小規模な職場が多く、少人数で狭い空間で毎日顔を合わせるため、人間関係が悪化すると逃げ場がありません。

高圧的な上司がいる、価値観の合わない同僚がいる、女性社会特有の人間関係に疲れたなど、悩みの内容はさまざまです。大規模な組織であれば異動や配置転換で解決できることもありますが、小規模薬局ではそれも難しく、転職を選択せざるを得ないケースが多いのです。

第4位:キャリアアップ・スキルアップを目指したい

やりがいを感じられない、スキルアップの機会がないといった理由で転職を考える薬剤師も多くいます。同じ職場で長く働いていると業務がルーティン化し、特に小規模な門前薬局では扱う処方箋の種類も限られるため、新しい学びが得られないと感じることがあります。

薬剤師は常に最新の医療知識をキャッチアップする必要がある職種ですが、研修制度が整っていない職場では自己学習に頼らざるを得ません。より幅広い処方箋に触れたい、専門性を高めたい、認定薬剤師の資格取得をサポートしてほしいといった希望から、教育制度が充実した職場への転職を選ぶ方が増えています。

病院勤務は最先端の医療に関われることで人気があり、また大手チェーン薬局は研修制度が充実していることから、スキルアップを目指す薬剤師の転職先として選ばれることが多いようです。

第5位:ライフスタイルの変化(結婚・育児・介護など)

結婚、出産、育児、介護といったライフイベントをきっかけに転職する薬剤師も少なくありません。配偶者の転勤に伴う引っ越し、子どもの小学校入学に合わせた勤務時間の調整、親の介護のために実家近くへの転居など、外的要因による転職は避けられないものです。

このような場合、通勤時間の短縮やワークライフバランスを重視した職場選びが中心となります。フルタイム勤務からパート勤務への変更、夜勤や土日勤務のない職場への転職など、生活スタイルに合わせた働き方を求める傾向があります。

薬剤師資格があれば全国どこでも働けるため、ライフステージの変化に応じて柔軟にキャリアを調整できるのは大きなメリットといえるでしょう。

転職理由の本質を見極める重要性

 

表面的な転職理由の裏には、より深い本質的な理由が隠れていることがあります。転職を成功させるためには、自分の本音を見つめ直すことが重要です。

ネガティブな理由をポジティブに変換する

人間関係や待遇への不満など、ネガティブな転職理由であっても、視点を変えればポジティブな目標に転換できます。例えば「給料が少ない」という不満は「働きに対して正当な評価をされる職場で働きたい」という希望に、「上司が不満」は「尊敬できる先輩のいる環境で成長したい」という目標に言い換えられます。

ストレスを感じる原因を深掘りすることも大切です。「忙しすぎるのが嫌」という場合は、「自分のライフスタイルに合わせて働ける職場で長く貢献したい」と考えることができます。単に今の職場を辞めることだけを目的にするのではなく、次の職場で何を実現したいのかを明確にしましょう。

外的要因による転職でも先々を見据える

結婚や介護といった外的理由での転職の場合、一見すると理由を深掘りする必要がないように思えます。しかし、転職後に本当に問題が解決するのかを考えることが重要です。

配偶者の転勤による転職であれば、今後も転勤の可能性があるのか、その頻度はどれくらいかを検討しておく必要があります。介護についても、今後状況が変化したときにどう対応するかを考えておくことで、長期的に安定して働ける職場を選べるようになります。

転職を成功させる5つのポイント

 

転職で後悔しないために、押さえておきたい重要なポイントを5つご紹介します。

ポイント1:転職理由を冷静に分析する

まず、自分がなぜ転職したいのかを整理しましょう。転職理由を書き出し、次の職場に求める条件をリストアップして優先順位をつけることが大切です。

給与アップを優先するなら大規模なドラッグストアチェーンを目指す、ワークライフバランスを重視するなら自宅近くの調剤薬局を選ぶなど、優先順位が明確になれば転職活動の軸がブレません。給与を上げれば業務負荷が高くなる可能性があり、ワークライフバランスを優先すれば給与面では妥協が必要になることもあります。

自分にとって何が最も重要かを見極めることで、転職後の満足度が大きく変わってきます。

ポイント2:希望条件を明確にする

リクルートメディカルキャリアの調査によると、職場選びで重視する条件として「給与条件」が69.9%で最多、次いで「休日・休暇」が45.4%、「勤務時間・勤務体系」が38.3%、「勤務地・通勤距離」が31.1%となっています。

転職活動で不安に感じることとして、「希望の勤務条件で働ける仕事が見つかるかどうか」が56.8%で最も高く、次いで「年収ダウン」が51.5%でした。こうした不安を解消するためには、自分の希望条件を明確にし、それを満たす職場を効率的に探すことが重要です。

ポイント3:転職理由をポジティブに伝える

面接や履歴書では、ネガティブな転職理由をそのまま伝えるのは避けましょう。採用担当者に「この人を採用しても同じ理由で辞めてしまうのでは」という不安を与えてしまいます。

人間関係が理由であれば「チームワークを大切にする環境で働きたい」、給与面の不満であれば「キャリアアップして管理薬剤師を目指したい」というように、前向きな表現に変換することが大切です。自分が今後どのように成長したいか、どんな薬剤師になりたいかという視点で伝えるようにしましょう。

ポイント4:職場の詳細情報を収集する

リクルートメディカルキャリアの調査では、転職活動で採用者側に提示してほしいこととして「勤務時間や休日休暇などの働き方に関する詳しい情報」が73.0%で最多となっています。次いで「募集している職場の具体的な仕事内容」が60.7%でした。

求人票に書かれている情報だけでは不十分なことが多いため、実際の残業時間、有給休暇の取得率、職場の雰囲気、在籍する薬剤師の年齢構成など、詳細な情報を収集することが重要です。転職エージェントを活用すれば、こうした内部情報を得やすくなります。

ポイント5:転職エージェントを活用する

転職活動には情報収集から書類準備、面接対策まで多くの手間がかかります。調査では、転職意向を持ちながら転職していない理由として「手間がかかる」が24.3%を占めています。

薬剤師専門の転職エージェントを利用すれば、希望条件に合った求人の紹介、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策のアドバイスなど、転職活動全般をサポートしてもらえます。一般には公開されていない非公開求人を紹介してもらえることもあり、選択肢が広がります。

また、転職理由の深掘りや志望動機の組み立て方など、プロの視点からアドバイスを受けられるため、転職成功率が高まります。

転職理由別|履歴書・面接での伝え方例

 

実際に履歴書を書いたり面接で答えたりする際の、具体的な伝え方の例をご紹介します。

給与・待遇への不満を伝える場合

NG例:「前の職場は給料が安かったので辞めました」

OK例:「前職では調剤業務の基本的なスキルを習得できましたが、今後はマネジメント面でも成長したいと考えています。御社では管理薬剤師としてのキャリアパスが明確に示されており、自分の成長が正当に評価される環境で長く貢献したいと考え、志望いたしました」

人間関係の不満を伝える場合

NG例:「上司と合わなくて辞めました」

OK例:「前職では上司の指導のもとで調剤の基本を学ぶことができました。これからは、その経験を活かしながらチームワークを大切にする環境で、より幅広い業務に挑戦したいと考えています。御社のチーム医療への取り組みに共感し、応募いたしました」

スキルアップを目指す場合

NG例:「前の職場では同じ処方箋ばかりでつまらなかったです」

OK例:「前職は門前薬局で、特定の診療科に特化した処方箋を扱っていました。基礎的なスキルは身につきましたが、今後は幅広い処方箋に対応できる総合的な知識を身につけたいと考えています。御社では多様な処方箋を扱っており、在宅医療や認定薬剤師取得のサポートも充実していることから、自分の成長に最適な環境だと感じました」

ライフスタイルの変化を伝える場合

NG例:「家が遠くて通勤が大変なので辞めました」

OK例:「結婚により前職の職場から遠くなったため、転職を決意しました。今後は地域に根ざした薬局で長く働きたいと考えており、地域医療や在宅医療に力を入れている御社で、地域の皆様の健康をサポートする仕事に貢献したいと考えています」

円満退職のための退職理由の伝え方

 

転職先が決まったら、現在の職場に退職の意思を伝える必要があります。業界内でのつながりがあることも多いため、円満に退職することが大切です。

正直に、しかし配慮を持って伝える

退職理由を伝える際は、基本的には正直に本音を伝えることが望ましいとされています。嘘をついたまま退職すると、後々まで負の感情を引きずることになりかねません。

ただし、人間関係や待遇への不満をそのまま伝えると角が立つため、表現を工夫する必要があります。「もっとチームワークを重視した環境で働きたい」「自分のポジティブな面をより発揮できる職場を探している」といった前向きな言葉に置き換えましょう。

外的理由を上手に活用する

家族の都合や通勤時間の問題など、外的な理由がある場合はそれを前面に出すと、引き止めにあいにくくスムーズです。具体的な給与や勤務時間の話をすると「それなら改善するから」と引き止められる可能性もあるため、「家庭の事情」「私的なことで詳細は控えさせていただきたい」と上手にぼかすことも時には有効です。

円満退職のための心構え

退職が決まったら早めに報告する、後任者への引き継ぎをしっかり行う、最後まで感謝の気持ちを持って接するといった姿勢も、円満退職には欠かせません。同じ業界内で転職するケースが多いため、立つ鳥跡を濁さず、良好な関係を保ったまま職場を去ることが、結果的に自分のためになります。

まとめ

 

薬剤師の転職理由は、業務負荷の高さ、給与への不満、人間関係のトラブル、スキルアップの希望、ライフスタイルの変化など多岐にわたります。約6割の薬剤師が転職意向を持っているというデータからも、転職が一般的なキャリア選択肢であることがわかります。転職を成功させるには、自分の転職理由を冷静に分析し、希望条件を明確にすることが重要です。ネガティブな理由もポジティブに変換して伝え、転職エージェントの力も借りながら、理想の職場を見つけましょう。

当社の転職支援サービスでは、業界に精通したキャリアアドバイザーが、あなたの転職理由や希望条件を丁寧にヒアリングし、最適な求人をご紹介します。まずはお気軽にご相談ください。

 

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監修 薬進キャリアサポート代表エージェント
キャリアコンサルタント

田井 靖人

2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。

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