薬剤師におすすめの転職先と選び方。失敗しないキャリア選択

薬剤師 転職 おすすめ

薬剤師として転職を考えているものの、どのような職場を選ぶべきか悩んでいませんか。薬剤師の活躍の場は調剤薬局やドラッグストアだけでなく、病院、製薬会社、公務員など多岐にわたります。本記事では、薬剤師におすすめの転職先を具体的に紹介し、自分に合った職場を見つけるための選び方や注意点を詳しく解説します。

薬剤師の転職市場の現状

 

薬剤師の転職活動を始める前に、現在の転職市場がどのような状況にあるのかを理解しておくことが重要です。ここでは、最新のデータをもとに薬剤師の転職市場を分析します。

薬剤師の主な従事先の割合

厚生労働省の令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、2022年12月31日時点における薬剤師数は323,690人です。そのうち、薬局に従事する薬剤師が最も多く、全体の約6割(58.9%)を占めています。次いで病院・診療所が約2割(19.3%)、医薬品関係企業が約1割(11.5%)となっており、この3つが薬剤師の主な活躍の場といえます。

引用元:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

薬局薬剤師は年々増加傾向にあり、1982年以降の推移を見ても大幅な増加が続いています。一方、医療施設に従事する薬剤師の増加ペースは比較的緩やかであることが分かっています。

薬剤師の転職理由

薬剤師の転職理由について調査したデータによると、1位は「スキルアップのため」(28%)、2位は「人間関係に不満」(14%)、3位は「勤務時間・残業に不満」(12%)となっています。年収や勤務地といった勤務条件よりも、自己研鑽や職場の雰囲気を重視する薬剤師が多いことが分かります。

また、30代以上の薬剤師の90%以上が1回以上の転職を経験しており、40代では「3回」(21%)、50代では「4回」(25%)と、年齢が上がるごとに転職回数は増えています。入社から「2年目」と「10年目以降」に転職する薬剤師が多く、キャリアの節目で転職を決断するケースが多いようです。

有効求人倍率から見る転職市場

厚生労働省の一般職業紹介状況によると、2021年の正社員(パート除く常用)の「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」の有効求人倍率は2.68倍で、全職種の1.06倍と比較すると高い水準にあります。

引用元:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」

ただし、2015年の7.18倍と比較すると大幅に低下しており、かつての深刻な人手不足は徐々に緩和している状態といえます。薬剤師という資格があれば転職先が見つかる状況から、キャリアや人柄も重視される状況にシフトしつつあります。

薬剤師におすすめの転職先7選

 

薬剤師が活躍できる職場は多岐にわたります。ここでは、それぞれの職場の特徴、メリット・デメリット、向いている人を詳しく解説します。

調剤薬局

調剤薬局は処方箋に応じて薬を調剤し、患者に薬の説明やアドバイスを行うのがメインの仕事です。薬剤師の従事先として最も多く、年間を通して求人が豊富にあります。

メリット:

  • 休みを取りやすい職場が多く、プライベートの予定が立てやすい
  • 地域に密着した「かかりつけ薬剤師」として、患者一人ひとりと深く関わり、地域医療に貢献できる
  • 薬剤師としての経験があれば即戦力として活躍できる

デメリット:

  • 小規模な薬局ではスタッフが少なく、人間関係が固定化しやすい
  • 特定の医療機関の処方箋に集中している場合、業務が定型的になりやすく、新たなスキルアップが難しいと感じる可能性がある
  • 大手の調剤薬局は若手の採用をメインにしていることが多く、ベテラン薬剤師は不利になる可能性がある

向いている人:

  • 患者と深く関わり、地域医療に貢献したい人
  • ワークライフバランスを重視する人
  • 安定した職場環境を求める人

ドラッグストア

ドラッグストアは調剤業務に加えて、一般用医薬品や日用品、化粧品などの販売業務も行います。店舗の規模が大きく、幅広い業務を経験できるのが特徴です。

メリット:

  • 一般用医薬品の販売を通じて、地域住民の健康相談に乗り、セルフメディケーションの推進に役立てる
  • 店舗の売上や利益を意識した販売スキル、在庫管理や発注業務などの経営のスキルも身につけられる
  • 大手のドラッグストアであれば、年収が高い傾向にある

デメリット:

  • 調剤薬局と比較すると勤務時間が長く、土日の出勤もある
  • 品出しやレジ打ちなど薬剤師以外の業務も多く、専門性が身につきにくいと感じる可能性がある
  • ノルマを課される場合がある

向いている人:

  • 人とのふれあいや会話が好きな人
  • 高年収を目指したい人
  • 幅広い業務経験を積みたい人

病院

病院の薬剤部や薬剤科に所属して、外来患者や入院患者の調剤、薬の管理などを行います。医療の最前線で、医師や看護師などのメディカルスタッフとともにチーム医療の一員として力を発揮できます。

メリット:

  • 医師や看護師など多職種と連携する「チーム医療」の一員として、患者への治療に深く関われる
  • カンファレンスへの参加や病棟業務を通じて、最先端の薬物治療に触れる機会が多く、薬剤師としての専門性を高められる
  • 専門薬剤師や認定薬剤師を目指している人にとって、必要な経験を積める環境がある
  • 命の現場で貢献できることに、大きなやりがいや充実感を得られる

デメリット:

  • 夜勤や当直といった不規則な働き方になり、身体的な負担が大きい可能性がある
  • 多職種との円滑な連携を取る必要性から、高いコミュニケーションスキルが求められる
  • 病院によっては給与水準が低いことがある

向いている人:

  • 臨床現場の最前線で働きたい人
  • 専門薬剤師や認定薬剤師を目指している人
  • チーム医療に興味がある人

製薬会社(MR・研究開発など)

製薬会社では、MR(医薬情報担当者)や研究開発職として新薬の開発や医薬品情報の提供に携わります。高い専門性と社会貢献性が求められる仕事です。

MRのメリット:

  • 高い年収が期待できる
  • コミュニケーション能力や営業スキルが身につく
  • 福利厚生が充実している企業が多い

MRのデメリット:

  • 全国転勤の可能性がある
  • 営業目標に対するプレッシャーを感じる

研究開発のメリット:

  • 社会貢献度の高い仕事に携われ、大きなやりがいがある
  • 専門性を深く追求できる
  • 福利厚生が充実しており、年収が高い傾向にある

研究開発のデメリット:

  • 求人数が少なく、中途採用が極端に少ない
  • 大学院卒以上の高い専門知識や研究経験が求められ、転職のハードルが高い

向いている人:

  • 新薬開発に興味がある人(研究開発)
  • 営業やコミュニケーションが得意な人(MR)
  • 高年収を目指したい人

治験コーディネーター(CRC)

治験コーディネーターは、治験を実施している医療機関に所属し、治験に関わる業務の調整を行います。被験者と直接関わり、治験中のフォローを行うため、薬の専門職である薬剤師が関わることは被験者の安心につながります。

メリット:

  • 新薬の誕生に立ち会える社会貢献性の高い仕事ができる
  • 基本的に夜勤がなく土日休みなので、プライベートとの両立がしやすい
  • 経験を積めば年収600万円以上も可能

デメリット:

  • 書類作成などのデスクワークが多く、調剤業務に携われなくなる
  • 製薬会社・医療機関・被験者との間で板挟みになりストレスを感じやすい

向いている人:

  • 新薬開発に貢献したい人
  • ワークライフバランスを重視する人
  • コミュニケーション能力が高い人

公務員薬剤師

公務員として薬剤師の仕事を行います。国家公務員は厚生労働省などで国の薬事行政や医薬品の研究・開発に関わり、地方公務員は都道府県庁や保健所、公立病院などで地域の衛生管理や薬事監視、試験検査、調剤業務などを行います。

メリット:

  • 収入や雇用が非常に安定しており、社会的信用が高い
  • 福利厚生が充実している
  • 幅広い業務経験を積める

デメリット:

  • 民間企業に比べて年収水準が上がりにくい傾向がある
  • 募集枠が極めて少なく、採用試験の難易度が高い
  • 公務員採用試験の合格が必須

向いている人:

  • 安定した雇用を求める人
  • 公的な立場から医療に貢献したい人
  • 幅広い業務に挑戦したい人

医薬品卸企業

医薬品卸企業は、製薬会社から仕入れた医薬品を病院や薬局へ安定的に供給するという、医療インフラを支える重要な役割を担っています。DI(医薬品情報)業務や管理薬剤師として働きます。

メリット:

  • 比較的カレンダー通りに勤務でき、残業が少ない傾向にあるため、ワークライフバランスを重視する人に適している
  • 多くの医療機関や製薬会社の担当者と関わるため、幅広い人脈を形成できる
  • 年収の目安は500〜600万円程度で安定している

デメリット:

  • 患者と直接関わる機会がなくなるため、臨床現場から離れることに寂しさや焦りを感じる可能性がある
  • 全国展開している大手企業の場合は転勤の可能性がある

向いている人:

  • ワークライフバランスを重視する人
  • 医薬品の流通に興味がある人
  • 臨床現場よりも裏方として医療を支えたい人

自分に合った転職先を見つけるポイント

 

数ある転職先の中から自分に最適な職場を選ぶためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、転職成功のための具体的なステップを紹介します。

転職の軸を明確にするための自己分析

転職活動を始める前に、転職理由と目的をはっきりさせておきましょう。自分の将来の薬剤師像や外せない条件などを明確にしておかなければ、自分に合った職場を見つけることが難しくなります。

「なぜ転職したいのか」という問いへの答えは、「年収を上げたい」「専門性を高めたい」「プライベートの時間を確保したい」「人間関係の良い職場で働きたい」など、人それぞれです。自身が転職で実現したい理由を書き出してみましょう。

その上で、自分の中で最も譲れない条件は何か、優先順位をつけてみてください。例えば、「年収は多少下がっても、土日休みは絶対に譲れない」といったように価値観を整理することで、数ある求人の中から自分に合った転職先を効率的に絞り込めるようになります。

求人情報は多角的にチェックする

求人情報を見る際は、給与や休日といった目先の条件だけでなく、長期的な視点でのチェックも重要です。例えば、以下のような項目も比較検討しましょう。

  • 認定薬剤師の資格取得支援制度はあるか
  • 管理職へのキャリアパスは用意されているか
  • 研修や教育制度は充実しているか
  • 出産や子育て支援の充実度はどうか

これらは、入社後のスキルアップや年収アップに直結する重要な項目です。表面的な条件だけでなく、中長期的なキャリア形成を見据えた情報収集を心がけましょう。

転職先の環境や雰囲気も確認しておく

勤務条件が良くても、職場の雰囲気や環境が自分に合わないケースも考えられます。通勤方法、職場の雰囲気、人間関係などもしっかりと確認しておくことが大切です。

確認方法としては、実際の勤務場所に行ってみたり、顧客として利用してみたり、口コミを確認することで、実際の雰囲気を感じ取れるケースがあります。また、転職エージェントは企業の担当者から直接ヒアリングしているため、求人票だけでは分からない職場の人間関係や離職率、有給消化率といったリアルな情報を持っている場合があります。

可能であれば、面接の際に職場見学させてもらえるか打診するのも有効な手段です。

長期的な視点でキャリアプランを考える

転職はゴールではなく、キャリアを形成していく上での一つのステップです。5年後、10年後に自分がどのような薬剤師になっていたいかというキャリアプランと、結婚や育児といったライフプランの両面から職場を選ぶことが、失敗しない転職のポイントです。

例えば、将来「がん専門薬剤師」などの専門資格を取得したいのであれば、関連病院での勤務経験が積める、あるいは資格取得支援制度が整っている職場を選ぶ必要があります。

ライフイベントとの両立を重視するなら、以下の具体的なポイントを確認しましょう。

  • 時短勤務制度の利用しやすさ
  • 子どもの急な体調不良時など、急な休みへのサポート体制
  • 産休・育休の取得実績

制度の有無だけでなく、実際の利用状況を確認すると、長期的に安心して働ける環境かどうかを判断できます。

自分に合った転職先を見つける方法

 

自分に合った転職先を見つけるためには、一つの方法にしばられず、複数の方法を併用して多角的に情報を集めることが重要です。ここでは、それぞれの方法のメリット・デメリットを解説します。

ハローワークを利用する

ハローワークは地元の求人が多く掲載されているため、地元で働きたい人におすすめです。公的機関ならではの安心感があり、特に「地元で腰を据えて働きたい人」や「公的なサポートを受けながら転職活動を進めたい人」に向いています。

ただし、一般求人も取り扱っているため、薬剤師の求人は少ない傾向にあります。利用する際の注意点として、求人票の情報が限られている場合があるため、面接の際に労働条件や仕事内容について、はっきりと確認することが大切です。

企業のHPやSNSで直接応募する

転職したい企業や興味のある企業があれば、直接応募するのも一つの方法です。企業の中にはハローワークを介さず、自社のHPやSNSで求人募集をしているところもあります。

近年では、公式SNSアカウントで実際に働く薬剤師が情報発信することが増え、職場のリアルな雰囲気や情報を得られるようになりました。ただし、SNSの情報は個人的な見解も含まれるため、信憑性については慎重に見極める必要があります。

薬剤師専門の転職エージェントを利用する

薬剤師が転職をするのであれば、薬剤師専門の転職エージェントの利用がおすすめです。薬剤師の転職に特化した転職エージェントには、さまざまな業種の求人が集まっており、転職サポートの実績が豊富にあるところであれば、的確なアドバイスをもらうことも可能です。個人の転職活動では出会いにくい非公開求人も多数取り扱っています。

非公開求人とは、企業の採用サイトをはじめ、サイト上では公開されていない、転職エージェントが独自に保有している求人のことです。

企業が求人を非公開にする理由には、「重要なポジションの募集で応募が殺到するのを避けたい」「急な欠員補充で、現職の社員に知られずに採用活動を進めたい」といった背景があります。

非公開求人には、高年収など好条件も多く、応募者がエージェントからの紹介者に限定されるため競争率が低いという大きなメリットがあります。非公開求人に出会うには、転職エージェントに登録し、自身の希望条件を伝えておくことが不可欠です。

転職活動で注意すべきポイント

 

転職を成功させるためには、いくつかの注意すべきポイントがあります。ここでは、転職活動で失敗しないための重要な注意事項を解説します。

給与・待遇の記載内容を正確に理解する

求人情報には、給料が「固定給(月給)」として記載されている場合と「年俸」として記載されている場合があります。

月給制の場合は、月給以外に賞与の支給回数や計算方法、残業手当は何分ごとに支給されるか、そのほかに支給される手当にはどのようなものがあるか、などを確認する必要があります。

年俸制の場合は、記載された金額の内訳を必ず確認しましょう。賞与や残業手当などが年俸に含まれているかどうかで、一見すると高収入に思える年収も実際に働いてみると割に合わないと感じることもあります。

特に、単身者や世帯主の場合には、住宅手当や家賃補助はメリットのある手当です。ただし、多くの手当があるように見えて、支給額自体が少ないというケースもあるので、事前に支給される金額と支給条件について確認しておきましょう。

休日・休暇の表記の違いを確認する

休日・休暇を確認するときに気をつけたいのは、「週休二日制」と「完全週休二日制」の違いです。

「週休二日制」は1ヵ月間に一度以上、週に二日の休みがあるということで、「完全週休二日制」は毎週、規定の曜日が二日休みになるということです。この違いを理解せずに転職してしまい、後悔する人も少なくありません。

「完全週休二日制」の表記でも、「土日休み」「二日連続休暇」などの詳細が分からない場合は、求人に明確な記載がない場合には問い合わせる、もしくは面接の際に質問するようにしましょう。

また、1年間に休日は何日あるのか、「年間休日」の日数も見ておきましょう。土日休みを希望する場合は、休日の曜日も合わせて確認することをおすすめします。

未経験者の受け入れ体制を確認する

未経験者の受け入れ体制が整っている職場は、スムーズに働くことができ、職場の雰囲気も良い場合が多いです。未経験者を育てて一人前の薬剤師にするためには時間も手間もかかるため、余裕がない職場では未経験者を敬遠しがちです。

ただし、すぐに人が辞めてしまう職場では、間口を広げるために未経験者歓迎を掲げていることもあるので、求人に記載されている「未経験者歓迎」の文字には注意しましょう。

未経験者の受け入れ体制が整っているかを確認するには、実際に雇用した未経験者の実績数やエピソード、未経験者への教育体制について質問することをおすすめします。

まとめ

 

薬剤師の転職先は薬局や病院だけでなく、ドラッグストア、製薬会社、治験コーディネーター、公務員、医薬品卸企業など多岐にわたります。それぞれに仕事内容や待遇、働き方が異なるため、転職を成功させるには、まず自己分析でキャリアの軸を定め、徹底的に情報収集することが重要です。転職はゴールではなく、長期的なキャリア形成の一つのステップとして捉え、5年後、10年後を見据えた職場選びを心がけましょう。

当社では専任のキャリアアドバイザーがあなたの希望や悩みをじっくりヒアリングし、長期的なキャリアプランに最適な職場をご紹介します。給与交渉や面接対策、職場見学の手配まで、転職活動を全面的にサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。

 

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監修 薬進キャリアサポート代表エージェント
キャリアコンサルタント

田井 靖人

2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。

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