フリーランス薬剤師とは?働き方・年収・始め方を徹底解説【2025年最新版】

薬剤師 フリーランス

近年、働き方の多様化に伴い、薬剤師の中でもフリーランスという選択肢に注目が集まっています。特定の企業に雇用されず、自分の裁量で働く時間や場所を決められるフリーランス薬剤師。

本記事では、フリーランス薬剤師の実態から年収、始め方、注意点まで、転職を考えている薬剤師の方に向けて網羅的に解説します。

 

目次

フリーランス薬剤師とは?派遣薬剤師との違い


フリーランス薬剤師とは、特定の企業や組織と雇用契約を結ばず、個人事業主として業務委託契約を締結し働く薬剤師のことです。調剤薬局やドラッグストアでの調剤業務をメインとするケースが多いですが、執筆業や講演活動、オンラインでの情報発信など、薬剤師の資格と知識を活かした多様な働き方が可能です。
総務省統計局の調査によると、2022年における本業がフリーランスの有業者数は209万人で、有業者に占める割合は3.1%となっています。
出典:総務省統計局「基幹統計として初めて把握したフリーランスの働き方~令和4年就業構造基本調査の結果から~」


派遣薬剤師との3つの違い


フリーランス薬剤師と派遣薬剤師は、働き方の自由度や契約形態において大きく異なります。


契約形態の違い


・フリーランス薬剤師:薬剤師本人と就業先が直接業務委託契約を締結
・派遣薬剤師:派遣会社と雇用契約を結び、派遣先で勤務


報酬決定の違い


・フリーランス薬剤師:自身で交渉・決定が可能
・派遣薬剤師:派遣会社が報酬を設定


社会保険の違い


・フリーランス薬剤師:自分で国民健康保険・国民年金に加入
・派遣薬剤師:派遣会社を通じて社会保険に加入


最も大きな違いは「契約の主体」です。フリーランスは薬剤師自身が契約の主体となるため、報酬や労働条件の柔軟性が高い一方、派遣薬剤師は派遣会社を介して契約するため、条件調整は派遣会社に委ねられます。


2024年11月施行のフリーランス新法とは


2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス新法)が施行されました。この法律は、フリーランスの労働環境を保護することを目的としており、以下の義務が発注者に課されています。
出典:内閣官房「フリーランス・事業者間取引適正化等法」


・取引条件の書面等による明示義務
・報酬支払期日の60日以内設定義務
・不当な契約内容の禁止
・ハラスメント対策の体制整備


薬剤師がフリーランスとして働く際、この法律によって以前よりも保護された環境で業務に従事できるようになりました。

フリーランス薬剤師の働き方と仕事内容


フリーランス薬剤師としてどのような働き方があるのか、具体的な仕事内容を見ていきましょう。


調剤薬局での業務委託


最も一般的なのが、調剤薬局との業務委託契約による働き方です。人員不足の薬局と契約を結び、調剤業務や服薬指導、薬歴管理などを行います。
複数の薬局と契約してローテーションで働くことも可能で、週の中で複数の職場を掛け持ちするスタイルも選択できます。実際、ある調査では、フリーランス薬剤師の中には「週4日は同じ薬局、週2日はスポットで需要がある薬局」といった柔軟な働き方をしている方もいます。


ドラッグストアでのスポット勤務


ドラッグストアの単発・短期勤務も需要が高い業務です。繁忙期の人員補充や、正社員薬剤師の休暇時の代替要員として働くケースが多く、土日のみ、特定の曜日のみといった働き方も可能です。


企業での専門業務


製薬会社や健康関連企業と業務委託契約を結び、新薬開発プロジェクトへの協力、研究活動への参加、商品開発のアドバイザリー業務などに従事することもできます。薬剤師としての専門知識を、調剤業務以外の分野で活かせる選択肢です。


執筆・講演・情報発信


薬剤師の専門知識を活かして、メディカルライターとしての執筆活動、講演活動、YouTubeやブログでの情報発信を行うフリーランス薬剤師も増えています。調剤業務と並行して行うことで、収入源を多角化できるメリットがあります。


注意!病院での業務委託は違法


重要な注意点として、病院・診療所における薬剤師業務の業務委託は医療法で禁止されています。 病院で働く場合は、必ず雇用契約を結ぶ必要があります。

フリーランス薬剤師の年収と報酬相場


フリーランス薬剤師として働く上で最も気になる収入面について、データに基づいて詳しく解説します。


正社員薬剤師の平均年収との比較


厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は599万3,200円となっています。
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」


一方、フリーランス薬剤師の収入は、時給換算で3,000円~4,500円が相場とされており、働く日数や時間によって大きく変動します。


フリーランス薬剤師の時給相場


マッチングサイトの情報によると、フリーランス薬剤師の時給相場は以下の通りです。


通常業務:時給3,000円~3,500円
高単価案件:時給3,500円~4,500円
緊急スポット:時給4,000円以上も


例えば時給3,500円で週5日(1日8時間)、月20日勤務した場合、月収56万円、年収672万円となり、正社員の平均年収を上回ることも可能です。


年収1,000万円は可能か


フリーランス薬剤師として年収1,000万円を達成することは可能です。ただし、以下の条件を満たす必要があります。


高単価案件(時給3,500円以上)を安定的に確保
月間稼働時間200時間以上(週5日フル稼働)
複数の収入源(調剤業務+執筆・講演など)の確保
実際に年収1,000万円を達成しているフリーランス薬剤師の多くは、調剤業務に加えて執筆業や講演、コンサルティングなど複数の事業を展開しています。

フリーランス薬剤師のメリット


フリーランスとして働くことで得られる具体的なメリットを解説します。


働き方の自由度が高い


フリーランス最大の魅力は、働く時間・場所・日数を自分で決められることです。


・週3日勤務でワークライフバランスを重視
・繁忙期は週6日勤務で収入を最大化
・複数の薬局を掛け持ちして様々な経験を積む
・平日休みを取って混雑を避けた旅行や趣味の時間を確保


ライフステージに合わせて柔軟に働き方を調整できるため、育児や介護との両立もしやすくなります。


高収入を目指せる


時給換算で正社員より高い報酬を得られる可能性があり、自分の頑張り次第で収入を増やせます。派遣薬剤師と比べても、紹介手数料が低いため、薬剤師本人により多くの報酬が還元されます。


多様な職場で経験を積める


一つの職場に縛られることなく、様々な薬局やドラッグストアで働くことで、幅広い知識とスキルを身につけられます。門前薬局や在宅医療に力を入れている薬局、漢方に強い薬局など、特色の異なる職場での経験は、薬剤師としての成長につながります。


人間関係のストレスが少ない


正社員のように一つの職場の人間関係に深く関わる必要がないため、人間関係のストレスを軽減できます。合わない職場があっても、契約期間終了後に別の職場を選択できる自由があります。

 

フリーランス薬剤師のデメリットと注意点


自由度の高さと引き換えに、フリーランスならではの課題も存在します。


収入が不安定


最も大きなデメリットは、収入の安定性です。


・案件が途切れれば収入がゼロになる
・体調不良で働けない場合、収入が得られない
・繁閑の差が大きく、月によって収入が変動
・ボーナスや退職金がない


安定した収入を確保するには、複数の契約先を持つ、貯蓄を厚くする、収入の柱を複数持つなどの対策が必要です。


社会保障が手薄になる


正社員と比べて社会保障面で不利になります。


・国民健康保険(会社の健康保険より保険料が高い)
・国民年金のみ(厚生年金がない)
・雇用保険・労災保険の対象外
・傷病手当金や出産手当金がない


老後の年金額が少なくなるため、iDeCoなど個人で年金対策を行う必要があります。


確定申告など事務作業の負担


会社員のときは不要だった確定申告を自分で行う必要があります。


・1年間の帳簿管理
・領収書・レシートの整理
・控除証明書類の管理
・所得税・消費税の計算と納税


慣れないうちは本業を圧迫する大きな負担となるため、会計ソフトの活用や税理士への依頼を検討する必要があります。


社会的信用度の低下


住宅ローンやクレジットカードの審査が通りにくくなる可能性があります。開業届の提出や確定申告の継続により信用度を高める努力が必要です。


スキルアップ機会の減少


正社員のような体系的な研修制度がないため、自己研鑽が必要です。認定薬剤師や専門薬剤師の資格取得費用も自己負担となります。

フリーランス薬剤師の始め方【5ステップ】


フリーランスとして独立するための具体的な手順を解説します。


ステップ1:開業届の提出


個人事業主として事業を始めるために、税務署に「個人事業の開業届出書」を提出します。開業から1ヶ月以内の提出が推奨されます。
同時に「青色申告承認申請書」も提出することで、確定申告時に最大65万円の特別控除が受けられます。
出典:国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」


ステップ2:国民健康保険・国民年金への切り替え


会社の健康保険・厚生年金から、国民健康保険・国民年金への切り替え手続きを行います。退職後14日以内に市区町村の窓口で手続きを済ませましょう。


ステップ3:仕事の探し方


フリーランス薬剤師の仕事を探す方法は主に4つあります。


マッチングサイトの利用


薬局とフリーランス薬剤師を直接マッチングさせるためのサイトです。紹介手数料が低く抑えられています。


人脈・紹介


以前働いていた職場や薬剤師仲間からの紹介も重要な案件獲得ルートです。良好な人間関係を維持しておくことが、継続的な仕事の確保につながります。


直接営業


働きたい薬局に直接連絡して、業務委託契約を提案する方法もあります。人材不足の薬局では、フリーランス薬剤師を求めているケースも多くあります。


転職エージェントの活用


フリーランス案件を扱う薬剤師専門の転職エージェントに登録することで、自分で営業する手間を省きつつ、安定的に案件を紹介してもらえます。


ステップ4:業務委託契約の締結


フリーランス新法により、発注者は以下の事項を書面等で明示する義務があります。


・業務の内容
・報酬額
・支払期日(給付日から60日以内)
・就業場所
・業務従事時間


契約内容をしっかり確認し、不明点は契約前に解消しましょう。


ステップ5:必要に応じて会計ソフト・税理士の活用


確定申告の負担を軽減するため、以下のツールやサービスの活用をおすすめします。


・クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)
・税理士への顧問依頼
・青色申告会への加入

 

フリーランス薬剤師に向いている人・向いていない人


自分がフリーランスに適しているか、チェックしてみましょう。


フリーランスに向いている人


自己管理能力が高い人:スケジュール管理、健康管理を自分で行える
積極的に営業・交渉できる人:案件獲得や報酬交渉を主体的に行える
ある程度の実務経験がある人:即戦力として評価されるため、3年以上の経験が望ましい
変化を楽しめる人:様々な職場で働くことをポジティブに捉えられる
収入の変動に耐えられる人:貯蓄があり、収入が不安定でも心理的に安定している


フリーランスに向いていない人


安定した収入を最優先する人:毎月決まった給与とボーナスが欲しい
手厚い福利厚生を求める人:住宅手当、家族手当、退職金などを重視する
事務作業が苦手な人:確定申告や帳簿管理を負担に感じる
一つの職場で深い関係を築きたい人:同僚との長期的な人間関係を重視する
実務経験が浅い人:基礎的なスキルをまず身につける必要がある

よくある質問(FAQ)

Q薬剤師経験が浅くてもフリーランスになれますか?
A可能ですが、最低3年以上の実務経験を積んでからの独立をおすすめします。フリーランスは即戦力として求められるため、基本的な調剤スキルや服薬指導のスキルを十分に身につけてからの方が、案件獲得がスムーズです。
Qフリーランスから正社員に戻ることはできますか?
A可能です。薬剤師資格があれば再就職はスムーズで、フリーランスとしての様々な経験は転職時の強みになります。状況に応じて柔軟に働き方を変えられるのも薬剤師の強みです。
Q住宅ローンの審査は通りますか?
Aフリーランスは正社員と比べて審査が厳しくなる傾向にあります。ただし、開業届の提出、確定申告の継続、安定した収入実績があれば審査に通る可能性は高まります。
Q確定申告が不安です。どう対処すればよいですか?
Aクラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)を使えば、簿記の知識がなくても帳簿管理ができます。また、税理士に依頼すれば月2~3万円程度で確定申告を任せられます。
Qコロナ禍でフリーランス薬剤師の需要はどうなりましたか?
Aコロナ禍により患者数が減少し、派遣薬剤師の需要は一時的に低下しました。しかし、フリーランス薬剤師は自分の交渉次第で高い報酬を得られるため、柔軟に対応できたケースも多くあります。また、在宅医療の需要増加に伴い、在宅対応できる薬剤師の需要は高まっています。

まとめ


フリーランス薬剤師は、高い自由度と収入アップの可能性がある一方、収入の不安定さや社会保障の手薄さといった課題もあります。2024年11月に施行されたフリーランス新法により、以前より保護された環境で働けるようになりましたが、自己管理能力と営業力が求められる働き方です。

まずは副業から始めるなど、段階的にフリーランスへの移行を検討することをおすすめします。

転職を考えている薬剤師の方は、当サービスで様々な働き方の選択肢を探してみてください。

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監修 薬進キャリアサポート代表エージェント
キャリアコンサルタント

田井 靖人

2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。

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