派遣薬剤師とは?時給相場・メリット・デメリットを徹底解説

派遣 薬剤師

派遣薬剤師という働き方に興味があるものの、「本当に高時給なのか」「雇用は安定しているのか」「どんな人に向いているのか」と不安を感じていませんか。

この記事では、厚生労働省のデータをもとに、派遣薬剤師の時給相場、働き方の特徴、メリット・デメリットを徹底解説します。あなたに最適な働き方を見つけるヒントが見つかるはずです。

派遣薬剤師とは|雇用の仕組みと働き方の基本

 

派遣薬剤師は、派遣会社と雇用契約を結び、調剤薬局やドラッグストアなどで働く薬剤師のことです。正社員やパート・アルバイトとは異なる雇用形態で、自分のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。

派遣薬剤師の雇用の仕組み

派遣薬剤師の雇用関係は、一般的な正社員やパート・アルバイトとは大きく異なります。雇用主は派遣会社であり、給与や社会保険は派遣会社から提供されます。一方、実際の業務は派遣先の企業(調剤薬局やドラッグストアなど)の指示に従って行います。

また、派遣は有期雇用であり、契約期間終了ごとに更新の判断が行われます。労働者派遣法により、同じ派遣先で働ける期間は原則最長3年と定められています。

正社員・パート・派遣の主な違い

正社員は勤務先企業と無期雇用契約を結び、定年まで働くのが一般的です。給与は月給制で、ボーナスや退職金も支給されます。一方、パート・アルバイトは勤務先企業と有期雇用契約を結び、時給制で働きます。派遣薬剤師は、派遣会社と有期雇用契約を結び、時給制で働く点がパート・アルバイトと似ていますが、雇用主が派遣会社である点が大きく異なります。

また、派遣薬剤師には原則としてボーナスは支給されませんが、その分が時給に上乗せされているため、パート・アルバイトよりも高時給になっています。勤務時間の柔軟性は、正社員よりもパート・アルバイトや派遣の方が高い傾向にあります。

派遣薬剤師の種類

派遣薬剤師には、主に2つの種類があります。

 

一般派遣:最も一般的な派遣形態です。派遣期間は最長3年で、薬剤師免許以外の特別な条件はありません。調剤薬局やドラッグストアでの調剤業務がメインです。

 

単発派遣:勤務期間が1日から30日以内、かつ週20時間以内の短期派遣です。ただし、労働者派遣法により「日雇い」に該当するため、原則として禁止されています。単発派遣で働けるのは、60歳以上の方、雇用保険の適用を受けない学生(定時制・通信制を除く)、本業の年収が500万円以上の方、世帯年収が500万円以上で主たる生計者ではない方のいずれかの条件を満たす場合のみです。

派遣薬剤師が働ける職場

派遣薬剤師の主な勤務先は、調剤薬局ドラッグストアです。業務量が多く、即戦力が求められる職場で需要が高い傾向にあります。

病院への派遣は原則禁止されています。労働者派遣法により、病院などの医療関係業務への派遣は原則として認められていません。ただし、紹介予定派遣(派遣期間終了後に正社員として直接雇用されることを前提とした派遣)や、産休・育休中の薬剤師の代替として働く場合は例外的に認められています。

派遣薬剤師の時給相場|正社員・パートとの比較

 

派遣薬剤師の最大の魅力は「高時給」です。ここでは、実際の時給相場と、正社員やパート薬剤師との収入比較を詳しく解説します。

派遣薬剤師の平均時給データ

派遣薬剤師の平均時給は2,500円〜3,000円が多くなっています。一方、パート・アルバイト薬剤師の平均時給は約2,000円です。派遣薬剤師の時給は、パート薬剤師よりも約1,000円も高く、約1.5倍の水準であることがわかります。

正社員薬剤師との年収比較

派遣薬剤師としてフルタイムで働いた場合、正社員薬剤師を上回る年収も可能です。時給3,300円で1日8時間、月20日勤務した場合、月収は528,000円、年収は約634万円となります。

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師全体の平均年収は約599万円です。派遣薬剤師としてフルタイムで働けば、正社員の平均年収を上回る収入が得られる可能性があります。

出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」

派遣薬剤師の時給が高い3つの理由

派遣薬剤師の時給が高い理由は、以下の3つです。

 

即戦力として求められている

人手不足の職場では、すぐに働ける経験者を確保するために高時給を設定しています。求人を出して面接を行うコストや時間を省くことができるため、企業側にもメリットがあります。

 

同一労働・同一賃金の原則

労働者派遣法により、正社員と派遣社員の間で同じ仕事をする場合、賃金や手当に差をつけてはならないと定められています。派遣薬剤師の時給には、ボーナスや退職金が上乗せされているため、高時給になっています。

 

地域による需要の差

薬剤師不足が深刻な地方では、さらに高時給で募集されることがあります。都市部では時給3,000円程度ですが、地方では3,000円~4,000円以上のケースもあります。

派遣薬剤師のメリット

 

派遣薬剤師には、正社員やパート薬剤師にはない独自のメリットがあります。ここでは、派遣薬剤師の5つの主なメリットを解説します。

働き方の自由度が高い

派遣薬剤師は、自分のライフスタイルに合わせて働く時間や日数を選べるのが最大の魅力です。週3日勤務で育児や介護と両立したり、週末だけ勤務して平日は別の仕事をしたり、午後だけ・夜の時間だけといった時間帯を選んで働くことも可能です。また、短期間で集中して稼ぎたい方はフルタイム勤務を選ぶこともできます。

正社員のようにフルタイムで働くことも、パートのように短時間だけ働くことも可能です。結婚、育児、介護など、ライフイベントに合わせて柔軟に働き方を変えられます。

高時給で効率よく稼げる

派遣薬剤師の時給は平均3,341円と、パート薬剤師の約1.6倍です。短時間の勤務でも、効率よく高収入を得られます。例えば、週3日・1日5時間勤務の場合、月収は約200,400円、年収は約240万円です。週5日・1日8時間勤務の場合は、月収約528,000円、年収約634万円となり、働き方次第で正社員並みの年収を得ることも可能です。

1つの職場に縛られない

派遣薬剤師は、数カ月~数年の周期で職場が変わります。1つの職場に固定されず、さまざまな経験を積めるのがメリットです。多様な診療科の処方せんに対応したり、複数の電子薬歴や調剤システムに触れたりすることで、幅広いスキルを習得できます。また、契約期間が限られているため、人間関係のストレスを感じても割り切って働けます。

転職活動の負担が少ない

派遣会社に希望条件を伝えておけば、派遣会社が条件に合う職場を探してくれます。自分で求人を探したり、面接の日程調整をしたりする必要がありません。希望条件に合う求人の紹介、職場の見学の調整、給与や勤務条件の交渉、勤務開始後のフォローなど、派遣会社がサポートしてくれるため、転職にまつわるストレスを大幅に軽減できます。

残業がほとんどない

派遣薬剤師は、契約時に定めた勤務時間で働くのが基本です。正社員のように急な残業を求められることはほとんどありません。仮に残業が発生した場合でも、派遣会社にきちんと記録されるため、サービス残業になることはありません。時間外労働に対しては、割増賃金が支払われます。

派遣薬剤師のデメリット

 

派遣薬剤師にはメリットが多い一方で、デメリットもあります。ここでは、派遣薬剤師として働く前に知っておくべき5つのデメリットを解説します。

気に入った職場でも長く働けない

派遣薬剤師は、同じ派遣先で最長3年しか働けません。契約期間が終了すると、次の派遣先へ移る必要があります。仕事内容や人間関係が良好で「ずっとこの職場で働きたい」と思っても、契約期間が終われば別の職場に移らなければなりません。ただし、双方の合意があれば、派遣先に正社員として直接雇用される「紹介予定派遣」を利用する方法もあります。

新しい環境への適応力が必要

派遣薬剤師は、派遣先が変わるたびに新しい職場の業務を覚える必要があります。即戦力として派遣されるため、時間をかけて教育してもらえることは少なく、すぐに状況を理解して対応する力が求められます。迅速な業務理解力、柔軟なコミュニケーション能力、ストレス耐性など、新しい環境にすぐになじめる適応力が必要です。

派遣切りのリスクがある

派遣薬剤師は、企業の人員調整の役割を担うことが多く、景気悪化や人員充足により、契約更新されない「派遣切り」のリスクがあります。不景気になり業界全体の求人が減ると、派遣切りや雇い止めが起こりやすくなります。雇用が不安定なのは、派遣のデメリットです。

マネジメント経験を積めない

派遣薬剤師は、調剤や服薬指導といった基本業務が中心です。管理薬剤師やエリアマネージャーなどの管理職へのキャリアアップは難しいでしょう。職場全体を見渡して業務を調整したり、スタッフを指導したりする経験は、派遣薬剤師として長く働いても得られません。

ボーナスや退職金がない

派遣薬剤師には、原則としてボーナスや退職金が支給されません。退職金は一般的に勤続3年以上が条件となることが多く、同じ職場に3年を超えて勤務できない派遣は対象外です。ただし、派遣の時給には、ボーナスや退職金分が上乗せされているという考え方もあり、時給が高い理由の1つとされています。

派遣薬剤師に向いている人・向いていない人

 

派遣薬剤師という働き方は、すべての人に適しているわけではありません。ここでは、どのような人が派遣に向いているのか、向いていないのかを解説します。

派遣薬剤師に向いている人の特徴

ライフスタイルに合わせて働きたい人

育児や介護と両立したい方、プライベートを充実させたい方、Wワークをしたい方に最適です。週3日勤務や午前のみ勤務など、柔軟に働けます。

高時給で効率よく稼ぎたい人

短時間の勤務でも、パート薬剤師の約1.6倍の時給で働けます。効率よく稼ぎたい人に最適です。

さまざまな職場を経験したい人

派遣薬剤師は、複数の調剤薬局やドラッグストアで働けます。多様な処方せん対応や、異なる薬局システムを経験したい人に向いています。

人間関係のストレスを避けたい人

契約期間が限られているため、職場の人間関係に深く悩むことが少なくなります。割り切って働きたい人におすすめです。

特に、育児中の女性薬剤師にとって、派遣は非常に働きやすい選択肢です。保育園の送り迎えに合わせた勤務時間や、週3日勤務など、子育てと両立しやすい働き方が可能です。

派遣薬剤師に向いていない人の特徴

安定した収入を重視する人

派遣は有期雇用のため、常に仕事があるとは限りません。定期的な収入が必要な人は、正社員として働く方が安心です。

同じ職場で長く働きたい人

環境の変化が苦手で、同じ職場、同じ人間関係の中で落ち着いて働き続けたい人には、派遣は不向きです。

キャリアアップを目指す人

管理薬剤師やエリアマネージャーなどの管理職を目指している人は、正社員としてキャリアを積む方が良いでしょう。

派遣薬剤師の福利厚生と始め方

 

派遣薬剤師も、条件を満たせば社会保険や有給休暇を利用できます。ただし、派遣薬剤師の福利厚生は、派遣先ではなく派遣会社の制度が適用されます。

法律で定められた福利厚生

健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険といった社会保険は、派遣会社ごとに加入条件が異なるため、事前に確認しましょう。

また、労働基準法により、一定期間勤務すれば有給休暇が付与されます。派遣薬剤師も正社員と同様に、有給休暇を取得できます。産前産後休業(産休)や育児休業(育休)も、法律に基づいて取得できますが、派遣会社によって条件が異なるため、確認が必要です。

派遣薬剤師の始め方

派遣薬剤師として働くには、まず派遣会社に登録する必要があります。氏名、連絡先、薬剤師免許番号、希望条件などをインターネットや電話から無料で登録できます。

登録後、担当のコンサルタントと面談を行い、詳しい希望条件やキャリアプランを伝えます。派遣会社が希望条件に合った求人を探して紹介してくれ、条件に合う派遣先が決まったら、就業条件を確認したうえで派遣会社と雇用契約を結びます。

契約前には、時給、勤務時間・勤務日数、契約期間、業務内容、交通費の支給有無を必ず確認しましょう。

まとめ|派遣薬剤師は柔軟な働き方を求める人に最適

 

派遣薬剤師は、高時給で柔軟な働き方ができる魅力的な選択肢です。ただし、雇用の不安定さやキャリアアップの難しさといったデメリットもあります。自分のライフスタイルやキャリアプランに合わせて、派遣という働き方が適しているか慎重に判断しましょう。

派遣薬剤師の平均時給は約3,341円で、パート薬剤師の約1.6倍です。柔軟な働き方ができ、育児や介護と両立しやすい一方、同じ職場で最長3年しか働けない、ボーナスがないなどのデメリットもあります。調剤経験があり、新しい環境に適応できる人に向いています。

派遣薬剤師として働くか迷っている方は、まず派遣会社に無料登録し、プロのコンサルタントに相談してみましょう。

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監修 薬進キャリアサポート代表エージェント
キャリアコンサルタント

田井 靖人

2013年摂南大学法学部を卒業後、不動産業界で土地活用事業に従事。
2019年から医療人材業界へ転身し、薬剤師と医療機関双方に寄り添う採用支援に携わる。
現在は薬剤師が“自分らしく働ける環境”を広げるべく、現場のリアルやキャリアのヒントを発信。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。どんな経験も糧に変え、薬剤師の未来を支える言葉を届けている。

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